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文維くんのこいびと 第1話 | 荷蓮花の小説 - BL小説・漫画投稿サイトfujossy[フジョッシー]
目次
文維くんのこいびと
第1話
作者:
荷蓮花
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第1話
唐煜瑾
(
とう・いくきん
)
は、夢を見ていた。 *** 「お兄ちゃま~、行かないで~」
唐
(
とう
)
家の広々とした玄関ホールで、幼い煜瑾は兄・
唐煜瓔
(
とう・いくえい
)
の背中を追って泣いていた。 「煜瓔お兄ちゃま~、煜瑾を置いて行かないで~」 グズグズと泣く煜瑾を、いつもならすぐに駆け付けてくれるはずの優しい兄が、振り返ることすらしない。 「あ~ん、あ~ん。お兄ちゃま~」 とうとうしゃがみ込んで泣き出した煜瑾の耳に、優しい、温かい、懐かしい声が聞こえた。 「いけませんよ、煜瑾。煜瓔お兄さまは外国へお勉強に行かれるのです。泣いて困らせてはいけません」 「お母しゃま…」 煜瑾はハッとして顔を上げ、母の姿を探した。 「お母しゃま、どこ?お兄ちゃま、どこ?」 立ち上がった煜瑾は広大な屋敷中を駆け回って母と兄を探すが、2人はどこにもいない。 「行かないで~、お兄ちゃま~!お母しゃま~、どこにいらっしゃるの~」 唐家の屋敷内を隅から隅まで探す煜瑾だが、いつもならあちこちにいるはずの使用人たちの姿も無い。 「誰かいませんか~?お兄ちゃま~?お母しゃま~」 煜瑾は最後に、重い書斎のドアを開けた。 そこには、重厚で大きなアンティークのライティングデスクがある。そのデスクの向こうに、誰かがこちらに背を向けて座っていた。 「?」 おそるおそる書斎に足を踏み入れた煜瑾は、その人に見覚えがあった。 「お父しゃま?」 煜瑾が声を掛けると、椅子に座った人影がこちらを振り返った。 「どうしました、煜瑾?」 その瞬間、煜瑾は「今」の自分に戻った。 「
文維
(
ぶんい
)
!」 そして、煜瑾は目を覚ました。
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荷蓮花
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