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第26話

「これが煜瑾(いくきん)の夢なら、なぜ私たちの意識がこんなに鮮明なのですか!」  医学的に説明がつかないことに、どうしても納得できない文維(ぶんい)は、思わず(ぼう)執事に苛立ちをぶつけてしまった。 「それは、これが包文維(ほう・ぶんい)先生の夢でもあるからです」 「はあ?」  当然のように答える執事に、文維は憤然としている。 「どうして、そんな非科学的なことがあり得るんですか!」  納得できない不合理に、文維は珍しく感情的になって言った。 「非科学的?」  文維の言葉に、茅執事は、意味ありげにフッと笑った。その態度が不満だったのか、文維が執事を無遠慮に睨んだ。それでも、茅執事は動じない。 「では包先生は、夢のメカニズムは全て解明されていると?」 「メカニズム?」  確信的な茅執事の言葉に、文維も少し興奮が冷めた気がした。 「夢で未来を知る人がいることは、ご存知でしょう?正夢(まさゆめ)と呼ばれるものを、あなたは全て否定できますか?人と人が夢の中で情報を交換することで、正夢が起きるとは、ご理解できませんか?」 「正夢…?」  確かに、医学雑誌にも「正夢」は取り上げられることがある。解明はされてはいないが、夢は個人の脳内だけで説明がつくとは「科学的」にも断言できないものだ。 「夢が、人と人との無意識を繋ぐものだとしたら…そんな風な考えは、本当に『非科学的』ですか?」  茅執事の言葉に、さすがの文維も黙り込んでしまった。 (人と人の無意識…)  そんな文維を前に、茅執事は(えつ)に入ったように続ける。 「煜瑾坊ちゃまの夢の中で、私たちは繋がっているのです。それぞれの夢があり、それを煜瑾坊ちゃまが繋げておられるのです。それが、煜瑾坊ちゃまのお力です」  そう言い切った茅執事は、敬愛を込めて小さな煜瑾を見守っていた。

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