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第59話:WARNING

「どういう意味ですか?」  思わず問うと、彩瀬さんは両手を挙げてひらひらと揺らせて見せた。 「俺もう行くけど、あとひとつだけ言わせてくれ」 「何ですか」 「神谷くんを大切にした方がいい」  心臓に鈍痛が走った。  西日が彩瀬さんの整った顔立ちを照らし、まるでオレの胸の奥までその光が射し込むようだった。 「どういう、意味ですか」 「そのまんまだよ。じゃあ俺帰るから」  呆然とする俺をよそに、彩瀬さんは駅の方へと消えた。  頭に熱感を覚えたまま帰宅すると、廊下に神谷が座り込んでいて、オレを見るなり、 「いおい!」  と声を挙げて駆け寄ってきてふらふらのオレを抱きしめた。 「大丈夫か? 顔色悪いぞ?」 「大丈夫だ、悪いがひとりにしてくれ」 「嫌だ」  珍しく低く厳しい声で神谷は言った。 「別に下心はねえよ。でも俺はおまえと一緒にいたい。こんな状態のおまえを放っておけない」    どこまでもめんどくさい男だ。俺は疲労困憊で、結局根負けした。  鍵を開け、神谷をリヴィングに入れ、自分はシャワーを浴びた。熱い湯で何もかもを洗い清めるような気持ちで。  だがそれも裏目に出た。のぼせてしまったようで、浴室から出るとまともに歩けなくなっており、意識も半覚醒状態だった。神谷にベッドまで連れて行かれて、そのまま眠ったらしい。  どこまでも深く。  そこでは美しい音楽が鳴っていて、オレはそれらを統べるようにその頂点に立っていた。それは得も言われぬ快感だったが、どうしてか、足下がぐらついていた。

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