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第4話

俺がアイツ…濱塚治朗と出会ったのは、高校の入学式だった。 -高校は男子校で全寮制。 そして嬉しい事に、彰と俺は寮で同室だった。 (やっぱり、俺と彰って赤い糸で結ばれているんだ) …クラスは離れちゃったけど。 でも、ここならいちゃいちゃしていても、変に思われないし、言われない。 -男子校だからなのか、後輩が先輩に憧れを抱いたり、擬似恋愛なんかも普通にしちゃっているみたいだし。 そりゃ、先生の前でいちゃいちゃする訳にいかないだろうけど…。 でも、彰と堂々といちゃつく事ができる。 それは、俺にとって嬉しいはずの事。 ドキドキ、ワクワクするはず…だったのに…どうしたんだろう…。 …何か…物足りない…。 中学の頃のようなドキドキ感が薄れてきた…みたいな…認めたくないけど、マンネリ化、してきたのかなと悩み始めた頃、ソイツの存在に気が付いた。 存在………というか、視線に。 ソイツ-濱塚治朗。 治朗は女性に間違われる程、可愛い顔をしているので入学した時から皆の注目の的。 男子校の中の貴重なオアシス、掃き溜めの中の鶴と皆が騒いでいた。 2年や3年までが治朗の顔を見に、わざわざ1年の教室まで来るほどに。 だが、俺は治朗が苦手だった。 最初は皆と同じで“可愛い子だな”(でも、俺にとってはもちろん、彰が1番だけどね)位しか思わなかった。 しかし、それから誰かの視線を感じて振り向くと、必ず治朗と目が合う。 最初は気のせいかな、偶然だろうと思っていた。 でも、気が付くと治朗と視線が合う。 気のせいなんかじゃない。 治朗が俺を見ている。 まるで全身を舐めるように。 その時。 俺の中の何かがアイツは危険だと警報を鳴らした。 治朗には近付かない方がいいと。 だから、俺は治朗に近付かないようにして…でも、治朗の動向には気を付けていた。 そして、気が付いた。 多分、他の誰も気が付かなかっただろう。 治朗の行動を注意深く見ていた俺だから気が付いたと思う。 治朗は、治朗と寮の部屋が一緒の會澤惠とデキていたみたいだった。 會澤は前髪を延ばして目元を隠し、黒縁の(今時、そんな眼鏡はないだろうと思うくらい)分厚い眼鏡をかけた地味で目立たない奴だったから、治朗と同室になった時、皆は一斉にホッと安心していた。 治朗と會澤がどうにかなる事はないだろうと。 治朗は、入学当時からいろんな奴と付き合っている噂が流れていたが、その相手は皆、俺みたいな(自分で言うのも何だけど)格好いい部類の人物ばかりだったから、會澤に関しては、皆、一切、ノーマーク。 それからも治朗はいろんな奴と付き合っていると噂が流れたが、會澤と噂になる事はなかった。 影で會澤と付き合いながら、表ではちゃっかり他の奴と付き合い堂々といちゃつく治朗。 (最低な奴) 彰にも治朗は危険だから近付かないようにと何度も注意した。 その度に彰は笑っていたが。 『大丈夫だよ。僕は濱塚のタイプじゃないからね。どちらかといえば、樹生の方が濱塚のタイプじゃないかな』 そう言われてドキリとした俺は、どれほど俺が治朗を苦手で避けているかを彰に熱弁した。 不自然なほどに一生懸命。 そんな俺を不思議そうに見詰めて、彰はポツリとひと言。 『そんなにムキになると、余計に怪しく思われるよ』 勿論、その言葉も思い切り否定した。 彰も『冗談だよ』と笑っていたけど。 だけど。 この不安感と、後ろめたさは何だろう。 何も悪いことはしていないのに。 治朗と視線が合う度に、彰に秘密を持ってしまったように感じるのは。 そう思う度にドキドキするのは。 何故だろう…………………………?

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