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 気が付くと見慣れた天井と照明が目に入った。   ガバッと起き上がり、アレは夢だったのかと辺りを見回す。だがやはりここは自分の部屋で間違いない。  瀬名はシャワーでも浴びているのか、遠くから水音だけが響いてくる。  カーテンの向こうはまだ暗い。時計を確認すると午前3時を回ったところだった。  全身を苛む倦怠感と腰に残る鈍痛。そして身体中に散らばる赤い痕。それら全てが昨夜の情事を鮮明に思い出させ、理人は再びベッドへと沈み込んだ。  怒っている事には気付いていたが、まさかあんな風に嫉妬するなんて思ってもみなかった。蓮との関係はもうとっくの昔に終わっているし、それは瀬名も理解していた筈だ。  独占欲が強すぎるのも考え物だと思う反面、先ほどの行為は正直悪くはなかったと思う。言葉で攻め立てられローターで散々乳首を弄られた挙句、最後は縛られて何度も連続でメスイキさせられて……。あれはあれで、凄く――。 (いやいやいやいやいや)  ぶんぶんと頭を振って馬鹿な思考を振り払う。あれはただのプレイであって、決して自分がM体質というわけではない。断じて違う。違うと、思いたい。  そんなことを考えながら悶々としていたら、いつの間にか水音が止んでいた。瀬名が風呂から上がって来る気配がして、理人は慌てて布団を目深に被り狸寝入りを決め込んだ。  すると案の定足音が近づいてきて、ギシッとスプリングが軋む音が部屋に響いた。  そのままジッと身を硬くしていると、鳥の羽で肌を撫でるようにふわりと頭を撫でられた。 「――情けない……あれくらいで妬くなんて……大事にしたいのに……」  ぽつりと独り言のように零れた言葉は少し掠れていた。瀬名の声色からはいつもの余裕が消え失せていて、まるで迷子の子供のような頼りなさを感じさせる。 「……呆れられてしまったらどうしよう」  瀬名は不安げにそう言うと、ぎゅっと抱きしめてきた。うなじに鼻先がくっついて来て、なんだかくすぐったい。 「……たく、珍しくしおらしくなったと思えば……」 ぼそりと呟いた言葉が、静かな室内で思ったよりも大きく響く。 「え?」 「……こん位で、呆れたりするか。ばーか……」 瀬名の腕の中で寝返りを打つと、彼の胸に頬を寄せ躊躇いがちにシャツを掴んだ。 「り、理人さん起きてたんですか!? いつから!?」 「さぁな。それより……、お前が嫉妬深いのなんて今更だろうが。何をそんなに気に病んでんだよ」 「……。だって、こんなの……格好悪いじゃないですか……」 瀬名は決まり悪そうな表情を浮かべると、視線を逸らし俯いた。 「別に、いいんじゃねぇの。格好悪くったって。クソでかな愛情表現だと思えば可愛いモンだし。……それに、その……凄く、気持ち、よかったし……」 最後の方になるにつれて、語尾が蚊の鳴く様な声になってしまった。顔が熱くて心臓がバクバクうるさい。きっと今の自分は茹で蛸みたいに真っ赤になっているに違いない。 瀬名の胸元にぐりぐりと額を押し付け、瀬名のシャツを掴んで顔を隠した。 「と、とにかく! 呆れたりとかはねぇから安心しろ――ぅ、わっ!?」 恥ずかしさを誤魔化すために捲くし立てると、突然身体をひっくり返され世界が反転した。背中に柔らかな衝撃を感じて、押し倒された事に気づく。 「理人さん、もう1回言って下さい」 「は? ちょっ、何言って――んんっ」 瀬名は有無を言わさず唇を重ねてきて、舌を絡めとられる。呼吸ごと飲み込むような激しい口づけに頭がクラクラした。 「……ん、んぅ……っ」 「はぁ……っ、理人さん……っ」 瀬名は息継ぎの合間に何度も名前を呼びながら、性急に身体中に触れてきた。首筋に吸い付かれてチクリとした痛みが走る。 「っ、お、おいっ! なにヤル気になってるんだお前はっ!?」 「え? だって、あんな可愛い事言われたら我慢できるわけないじゃないですか」 「っ、ば、ばっかじゃねーの!! さっきまでヘタレてたくせに……っ」 「大丈夫です。今度は優しくしますから」 「そういう問題じゃ――んっ」 抗議の言葉は瀬名に呑み込まれて消えた。結局この後、朝まで離してもらえなかったのは言うまでも無いだろう。 

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