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最終話:オンリーワン

「お疲れさまでした! お先に失礼します!」  俺は仕事を終えるとマスターに挨拶し、バックルームで着替えてからピアニッシモを後にした。  そして迷うことなく七分弱歩く。高級マンションに到着するとエントランスで10Sという部屋のナンバーを押す。何の反応もなくオートロックが解除される。中に入ってエレベーターに乗り込み、もう恐くなくなった十階の廊下を角部屋まで歩を進めた。  インターホンを押すと、すぐに扉が半分だけ開かれた。 「なに、今日も来たの?」 「来ました」 「この前紹介した人は?」 「全然ダメでした」 「はぁ……」  柳さんは半ば呆れ顔でため息をつき、ドアを開けてくれた。躊躇なく入室する俺は、そのままベッドルームに向かった。  「大津くん、きみさぁ……」  渋々といった声音で言いながら柳さんがベッドルームに入ってくる。 「もうちょっとさぁ、俺以外の人とも——」 「無理です」  俺は即答した。 「大体柳さんが俺を調教したのって私情でしょう? だったら最後まで責任取ってくださいよ」 「そりゃ正論だけど、きみの場合度が過ぎるからさぁ」 「そんな身体にしたのは誰ですか?」  俺は言いながら柳さんの首に腕を絡め、舌を出してキスをした。 「だってここまでの淫乱ちゃんだとは予想だにしてなかったし——」 「それは柳さんの見立てが悪かったんです」  柳さんはばつの悪そうな顔をして俯いた。そして、くくくと笑い出した。 「職業上、プライベートでパートナーは作らないつもりだったけど、ここまでぐいぐい来られると、まあ、悪い気はしないね」 「でしょ? 俺はもう、柳さんじゃないと感じない身体にされちゃったんです。最初からそうだったのかもしれません。何人代わりを紹介されたか忘れましたけど、もう全然ダメ、感じない。俺は柳さんだけなんです」  柳さんのワイシャツのボタンを外しながら、俺は語りかけていた。 「たまには映画でも見ようよ」 「俺が三回イったら見ましょうか」 「淫乱よくばりちゃんだな」  その声音には乗り気であるという気が感じられた。俺たちはそのままベッドに倒れ込み、交わり始めた。

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