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夜明け1

致した後の気だるげな時間。賢者タイム。 情熱も愛しさも全てが過ぎ去った後、それでもまだ足りないとばかりに足を絡めては、軽く口を啄み合う。いちゃいちゃとくっついてはいるが、段々眠くなってきた。うとうとと船をこぎ始めそうな思考を一生懸命繋ぎとめる。 彼はそれを見つめて、いつものように声をかけてくる。 「眠んなら寝よう?」 いつものように俺は首を振って静かに言うのだ。 「お前が寝たら俺も寝る。」 いつも通りの返事である。 いつの間に寝ているからどちらが寝たとか分からないのだが、それでも毎回彼は問うてくるし俺はそう返す。でも、そういうやり取りが幸せというやつなのかもしれない。 「おやすみ。」 どちらからともなくそう声をかけて眠りに落ちた。 鳥が鳴く声で目が覚めた。まだ外は少し暗い。 俺は彼に抱きしめられるようにして眠っていた。彼の背中には俺が昨日無意識でつけてしまったであろう爪痕がこちらを向いて壁に立てかけてある姿見に写って見えた。 最初はそんなつもりが無かったのに、今は彼の腕の中が俺の一番幸せな場所になっている。彼はそのことに気が付いているのだろうか。 昨日より今日、今日より明日。惹きつけられている。それをあいつに言えるかは別問題だけど。 「好きだよ。」 口に出して言いたいけれど、言ってしまったら後には戻れない。 寝てるからこそ口に出して言える。そっと呟いてもう一度目を閉じた。

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