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第6話 入学式 ①

「あの子はどこの子だったんだろう…」  和の頭から一瞬たりとも離れない伊織は、白い肌にほのかにピンク色の頬と、ぷるんとした唇。  栗色の髪は少しパーマがかかっているような毛先に、カールをした長いまつ毛。  身長は164センチぐらいだろうか、見た感じが190センチの和より確実に20センチ以上は低い。  ふわふわした柔らかい雰囲気の伊織は、和が今まであった誰よりも中性的だった。    入学式の会場に着いた時、そこにはすでにたくさんの入学式参加者たちが集まっていた。  友達同士なのだろうか?数人で集まって楽しそうに話をしている。  昔の和なら羨ましいと思うが、もうそう思うことも諦め、できるだけ怖がられないようにしようと努めた。  それでも和が歩けば関わりたくないと、生徒達が蜘蛛の子を散らすように和を避ける。  そりゃ、見た目が強面(これ)じゃな…。  わかっていても、やはり胸がちくりとする。    気にしている素振りを隠し、会場に入ろうとしていると、一段と人が集まっているところがある。  よくよく見ると、女子の群れが「キャーキャー」言っている。 有名人でもいるのか? ま、俺には関係ないことだけど。  和がその群れを通り過ぎようとした時、 「あ!和さん!?」  群衆の中から、聞き覚えのある声し、ふとある人の顔が浮かぶが…。   いや、まさかな…。  とその考えを打ち消し、そのまま前に進んで行く。 「やっぱり和さんだ!!待って!和さん、待って!」  群れの中心から「すみません、通してください。すみません。通してください!」と人をかき分け、かき分け、伊織が和に近づいてくる。 「和…さん…」  大きな声を出しながら、人をかき分けてきたからか、伊織は息を切らしていた。 「和さんも…大学(ここ)の新入生?」 「ああ…。伊…織も?」  女子たちの『あの人だれ?』の視線を感じながら、和はボソっと答える。 「本当に!?僕もここの新入生なんだ!一緒の大学なんて、なんだか僕たち運命みたいだね」  伊織は天使みたいな笑顔を浮かべる。  和は和で『運命だって!?』と驚きすぎて、言葉が出ない。 「ねぇ、和さんは誰か一緒?」  和の連れはいないのかと、伊織はあたりをキョロキョロした。 「1人」   ぶっきらぼうに答えると、周りの女子の視線がキツくなる。 普通に話してるだけなのに、なんで睨まれないとだめなんだよ。  女子の行動に、和も少しイラっとした。 「そうなの!?僕も1人だから、一緒に式にでよう」  伊織はきゅっと和の手を握ると、和の手をぐいぐい引いて、会場に入って行った。

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