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白黒はっきり
「どーしたのさ、かいちょーサン」
昼休み、生徒会室に桜和を呼びつけた。
何か問題?な訳ないよね、俺とかいちょーサンだけだもんね。そう、自分で質問して自己完結する桜和を座らせ、自分は扉の前に立ち、寄りかかる。
「なぁに、その体勢」
クスクスと、悪戯っ子のように笑う。
「まるでここに閉じ込めたみたいだね」
「その通りだ」
「……ふぅん」
途中までニコニコと軽薄な顔をしていたのが遮った途端冷めきった冷たい目になった。
「何、どうしたの?神楽その顔怖い」
怖いのはお前の方だ。そう思いながら桜和から目を逸らさないように顔を前に向ける。
逸らしたらきっと終わりだ。全部全部、何もかもわだかまりのまま、終わってしまう。
「俺は、解決しないまま何かを水に流すのは嫌いだ」
「…………」
冷めた目。睨めつけるような目。敵視するうような目。軽蔑するような目。
どれも当てはまる桜和の目には、撥ね付けて遠ざけるような光があって。
だから俺は、その感情の篭った目をそのままそっくり返してやった。
〝混乱〟渦巻く目を、返してやった。
「…参った。降参降参。話聞くからその目はヤメて。すっごい複雑」
──自分見てるみたいで気持ち悪い。
眉を八の字に寄せて破顔した桜和に小さく息をつく。こいつがアッサリしていてよかった。
「ま、なんのことかは大体分かるけどね」
呆れ返ったように言う。だけど、嬉しそうにも見えて。そう思うのは、俺だけだろうか。
「忘れていいって言ったのに。ほんっと人の話聞かないね」
「忘れていい、だろ? あわよくば忘れずに返事が欲しかった。違うか?」
「……」
はぁぁーと盛大に溜め息を吐かれた。
「ホント、敵わない」
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