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実は強がり
大学の友人から聞いた、聞いてしまった。
僕の彼氏、同じく、大学一年になる一ノ瀬亮が浮気している、と。
見知らぬ男性と肩を並べ、仲良く談笑しながら歩いていたらしい。
「はっ、そんなのある訳ないじゃん?この僕に見初められたんだから」
鼻を鳴らし、腕を組み尊大な笑みで返した。
猫みたいな大きな瞳、色白な小顔に細い身体にファッションセンス抜群な僕、倉田聖也。
「高校時代はモテてモテて仕方なかったし、もしもの時はまた探すし、てか、保険もいるしー」
...嘘です。
中学、高校時代、僕は眼鏡で地味な奴で、しかも人見知りが激しく、ようやくコンタクトになったのは高校最後の冬休み。
モテた試しは、実は、無い。
目に異物を入れるの、怖いのなんのって!
美肌を保つ為に化粧水に乳液、美容液は毎日。美容成分の含まれるマスクは週1ペースも欠かさない。
風呂上がりはボールが三つ着いた美容器で顔を、
「小顔になーれ、小顔になーれ」
呪文を唱えながらコロコロとマッサージ。
思い込みは大事、とSNSで読んだから実行してる。
ファッションセンスも皆無なので、毎月、ファッション雑誌を購入し、隈無く目を通し、服を購入する際は店員さんに念入りにアドバイスを受けながら選んでる。
「告白された数~?数えたことないなあ、てか、数えきれないもん」
...なんて嘯いてるけど、
初めて告白されたのは今彼の亮だけだ。
高校時代、コンタクトにするのが遅すぎた、そして、奥手過ぎたから、自分から告るなんて出来なくて。
好きな先輩を遠目で見つめて、一方的な片思いならば数多い。
じゃーね!と明るく、大学の唯一の友人と別れ、背中を向けた途端、地面を見つめ、猫背になり、とぼとぼと歩を進めた。
「う、浮気...ど、どうしよう、う、うぅ...」
電車に乗るまでの駅まで半べそになりながら、遂には、自宅に戻った僕はソファに突っ伏して泣いた。
「そうだ、相談しよ...」
ぐすん、と鼻を啜り、スマホを取り出した。
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