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ハロウィンのあとで

 煌びやかなミラーボールの光がドレスコードの仮装で異世界のハロウィンパーティーへと強制参加させられたNRCの生徒たちを照らす。学園中を巻き込む騒動と誤解があったものの一部の生徒たちのお陰で問題は無事に解決。主犯のゴーストたちとも和解し残りの時間をそれぞれが好き勝手に飲んで食べて踊って楽しんでいた。  そんな彼らから少し離れた場所では問題解決に携わった生徒の内のひとりマミーの仮装をしたフロイドが “お話”を終えて双子で片割れであるジェイドから飲み物を受け取り口をつけていた。 「そう言えば、飲み物を取りに行った時におもしろいお話をエースくんから聞いたのですが」  そう切り出したのは自分が取ってきた飲み物をぐいっと飲み干す兄弟を微笑ましく見つめていた片割れのジェイドの方だった。 「カニちゃんから?なに?」 「“お砂糖の国から来たキャンディの妖精ろりぽっぷちゃん”の話です」 「あは。ゴーストにとり憑かれたグッピーちゃんの話ねぇ」  空になったグラスをジェイドに返しながらその時の事を思い出したのかフロイドがケラケラと笑いだす。 「最初はおもしれーって思ったんだけどぉキャラ濃くて途中で飽きちゃったやつ~」 「おや、そうでしたか」  にっぱあと口を弧にして笑うフロイドに、ジェイドも口元に手をあて口角をあげる。 「なのにフロイドはエペルくんをからかって遊んだのですか?」 「んえ?ああ、だってゴーストが離れたグッピーちゃん、口わりーしメッチャ怒ってるしおもしろかったんだもん」 「おや。悪い人魚ですね」 「ジェイドに言われたくねぇんだけど?その場にいたらジェイドだってからかってたと思うし」 「んふふ。でも僕はフロイドのようにエペルくんの真似まではできないと思いますよ」 「グッピーちゃんのマネ?」 「ええ。フロイドがしていたとエースくんが言っていました。僕、キャンディの妖精の真似をしたフロイドのこと見てみたかったです。その場にいなくてとても残念に思いました。だからお願いですフロイド。もう一度僕のためにやって見せてくれませんか?」  興味津々、期待満々といったジェイドがフロイドに一歩詰め寄り目を輝かせる。そんな兄弟にやや引き気味になるフロイド。 「やけに食いついてくんじゃん」 「だって僕にも『つんっ♡』ってしてほしいので」 「え~、、」 「ダメですか?」 「気分じゃねぇからやだぁ~」  面白がるジェイドに対して、逆に落ちるフロイドの気分。気分屋のフロイドの気分が急降下するのはいつものことで。ただジェイドから離れるようにフロイドが一歩退くと、あからさまにショックを受けたという顔をしたジェイドが目元に手を添える。 「そんな…。あなたの大切な片割れのお願いですのに叶えてくれないのですか? 僕、悲しくて泣いてしまいます。しくしく」 「いや、ぜってーウソ泣きじゃん」 「おやおや、ふふ。分かりました。ではこちらの方にお手伝いしていただいて自撮りしようと思います」  泣き真似をピタリと止めたジェイドはそう言うと、手のひらを上に向け何かを乗せるような手つきをする。そしてそのナニかはジェイドの背後からふわりと現れた白っぽい人魂のようなもので、ジェイドの手のひらの上まで来るとそこでふわふわと浮いていた。 「はあ? なにそれっ?」 「不当に僕の身体を乗っ取ったゴーストさんです」 「は?何でそんなもんがいんの?、まさかジェイドもとり憑かれてたの?」 「ええ。でもリドルさんたちにちゃんと追い払ってもらいましたよ」 「じゃあ何でまたとり憑かれてんだよ?!」 「ふふふ。とり憑かれているわけではありません。魔法で捕まえて逃げられないようにしているのです。だって不当に乗っ取ったお代は払っていただかないといけないでしょう?」  眉毛をハの字にしギザギザの歯を見せて笑う顔はさすがオクタヴィネル寮の副寮長と言ったわっるい顔で。ただ、対価も払わず逃げまわる雑魚なら震え上がるであろうその顔も生まれた時から一緒にいるフロイドには何の感慨もない。………いや待って。 (今の話意味分かんねぇんだけど?うん。不当に乗っ取ったゴーストにお代を払わせるってのは分かるよ?でもそいつに手伝わせて自撮りする?何言ってんだコイツ、、)という目でフロイドはジェイドのことを見た。  そんなフロイドの様子に気づいたジェイドがにっこりと微笑む。 「ああ、この方、フロイドの真似が上手らしいのです」  自分の手のひらの上で揺らめく人魂にまで笑いかけまたまたフロイド的に問題発言をかます兄弟に、落ちたフロイドの気分は不機嫌さMAXに跳ね上がった。 「…オレのマネがうまいゴーストがジェイドにとり憑いてたってこと?」 「ええ。ふふ。ラギーさんはとり憑かれていた時の僕のことをフロイドだと思ったそうですよ」  おかしそうに笑うジェイドに、たまたま側を通りかかったオルトが声をかけてくる。 「あの時のジェイド・リーチさんはフロイド・リーチさんそっくりだったよね。あ、映像に残してあるよ。良かったら見る?」  そう言ってオルトがジェイドとフロイドの返事も待たずに映像を映し出す。 『オラ、かかってこいよ雑魚ども!そんでぇ……もっと僕のこと楽しませて? あはっ』 「本当にフロイドに似てますね。“右のメッシュはジェイドのJ” がなければ僕でも分からなかったかもしれません。ふふふ」 「僕もデータを検証するまで分からなかったよ。あ、兄さんどこ行くの?待ってよ。じゃあね、ジェイド・リーチさん。フロイド・リーチさん」  ふわりと身を翻しこっそりと人混みから離脱しようとするイグニハイドの寮長である兄を追うオルト。  それを微笑で見送ったジェイドはふむ、と頷く。 「これなら間違いなく自撮りでフロイドの『つんっ♡』を再現出来ますね」 「いや、すんじゃねぇよ!!」  本気でやるつもりでいるジェイドをこちらも本気で止めるフロイド。オレ似のゴーストをも一回とり憑かせるなんてふざけんなっ!!とキレッキレなんだが、浮かれるジェイドにはつうじない。 「何故ですか?今の映像、フロイドも見たでしょう?」 「見たから尚更ダメなんじゃん!」 「え?ああ、一人称ですか?そうですね『僕』のままではフロイドになりきれていませんし『オレ』に修正していただかないと」 「問題はそこじゃねぇよ!」 「あ、そうでした!一番の問題はメッシュでしたね!」 「ち、げーってのっ!!」 「メッシュではない?では他に何が問題なのでしょう?」  本気で分からないという顔をするジェイドに頭を抱えたくなるフロイド。なんで分かんねぇの?オレのジェイドにオレ以外のヤツがとり憑いて操って好き放題して?冗談じゃねえっての!!しかもオレ似のゴーストがジェのナカに入る?マジふざけんなっ!!なんだけど?…………よぉし分かったぁ。いくら言っても分からないってならぁとことん分からせるまでだよなあっ。  マジカルペンを構えジェイドに向けるフロイド。そのペン先から放たれた魔法がジェイドの掌の人魂に当たり飛散させる。 「何をするんですか、フロイド!」  いきなりの攻撃魔法に驚く、と同時に大事な願望を叶える為の道具(人魂)を無きモノにされ信じられないという顔をするジェイド。そんなジェイドに全く構わずフロイドはジェイドとの距離をつめ頭を突き合わせた。 「ジェイド~。『そんな難しい顔してるとぉ……幸せが逃げちゃう。つんっ♡』」  極上甘々蕩けるような笑顔と極甘すぎて溶かされてしまいそうなボイスからの鼻への『つんっ♡』。突然のことで心の準備ができていなかったジェイドは顔を真っ赤にして硬直してしまった。 (ま、ま、待ってください。今のはもしや “お砂糖の国から来たキャンディの妖精ろりぽっぷちゃん” フロイドバージョンでしょうか?な、な、なんて、可愛いんでしょう!!!それにハートを射ぬくかのような『つんっ♡』!!!いいえ。僕のハートは見事に射ぬかれてしまいました。ああ可愛らしく愛しいフロイド。あなたに『つんっ♡』をされた僕からは幸せが逃げたりすることは決してないでしょう。妖精のようなフロイド、、いえ、妖精そのもののフロイド♡そんな貴方が僕の片割れだなんて僕は誰よりも幸せです。…………ちょっと待ってください?こんなに愛らしく僕に幸福をもたらす妖精フロイドを確か僕の他にも見た人がいましたね。……許せません。僕だけの妖精フロイドです。あの方々の記憶を消してしまわなくては、、、 「やめなさい」との声と一緒に頭を叩かれるジェイド。 「…いたいです、アズール。何をするのですか」 「寮長として副寮長のバカな暴走を止めただけです」  振り返るジェイドを呆れた顔で制し、ついでに片割れにも苦言を投げるアズール。 「フロイドおまえも、片割れが妖精に見えるお花畑な頭の兄弟を野放しになんかするな」 「だってぇ。思った以上にジェイドがおもしれーことになってたんだもん」 「自分を妖精呼ばわりされてどこが面白いんです。人魚だろ、おまえは」 「おや?僕の思考を読んだのですか?アズール」 「は?駄々漏れでしたよ。周りを見てみなさい。誰もおまえと目を合わせようとしない」  遠巻きにして見ていた生徒たちが数名。ジェイドが顔を向けるとさっとそっぽを向いてしまった。「おやおや」と一応困り顔をするが全く困っていないジェイドにフロイドが抱きつく。 「オレが見てんだからいーじゃん」 「ふふふ。そうですね」 「…相互甘やかしウツボどもが。せめて僕には迷惑がかからないようにしなさいよ」 「はい」 「は~い」  返事だけはいい双子に「…は」と息をもらしそれからキョロキョロと周りを見回すアズール。 「ところでオルトさんを見ませんでしたか?」 「クリオネちゃん?」 「オルトくんでしたら、先ほど少しお話ししましたが。どうかされましたか?」 「買い取りたいデータが、いやいっそのことバックアップから全て消去してほしいデータがあるんですよ」 「ああ、イデアさんともろ被りアズールの映像ですね」 「え、何それ~?どーゆーこと?」 「余計なことを言うなジェイド!興味を持つなフロイド!」 「んふふ」 「ちえ~」  せっかくのおもしろい話ではあるけれど、当の本人からダメ出しされてはそれ以上の追及はできない。なんせ極悪非道と名高い双子も自寮の寮長様には敵わないのだ。 「で?オルトさんはどこに?」 「イデアさんを追って行かれたのでイデアさんがいらっしゃるところではないでしょうか」 「…ああ、分かりました」 「ねぇねぇアズール」 「何ですか?僕は急いでいるんですが」 「クリオネちゃんにさぁ『さっきの映像消せ』って言っといて~。『やらなきゃ絞める』もね~」 「…は?何ですか?それ」 「いーからいーから。ほら、早く行けば~?」 「おい。押すなっ」と不満を漏らすアズールの背中を押して送り出すフロイドにジェイドが眉根を寄せほんの少し残念そうな顔をする。 「フロイドは消してほしかったのですね、あの映像」 「あたりまえじゃん。あんな胸くそわりーヤツっ」 「おやおや。僕の映像なのですが」 「ジェイドだけどジェイドじゃねぇもんっ。それにジェイドだってカニちゃんたちの記憶消すとか言ってたじゃん。それと一緒」 「…一緒、ですか?」  納得いくようないかないような、そんな顔のジェイドにフロイドはたたみかけるように続ける。 「てかさ、オレまだ怒ってんだかんね?」 「? 何にです?」  フロイドを怒らせるような事何かしたでしょうか?ときょとんとするジェイドは自分がしようとしていた事の重大さをやっぱり分かっていないようだ。……はあ。未然に防げたからいーけど罪の意識がねぇのは問題だよなぁ? 「帰ったらきっちり分からせてやるから」 「そうですか。よろしくお願いします」 「も~~~。覚悟しとけよっ」 「え、あ、はい。 ? ? ?」 「………ふろ…ぃど……も……くださ…い…」 「だ~め。ジェード、まだ分かってねぇもん」 「…もぅ、…わかり…ましたからぁ、、」  異世界でのハロウィンが終わり、無事に寮に帰ってきたフロイドとジェイドは早々に自分たちの部屋に籠る。もちろんフロイドがジェイドを『分からせる』ため。 『何をどう分からせられるのかと思えばセックスでですか』 『そーだけど?』 『おやおや。一体何が分かるのでしょうね?』  ベッドに押し倒されたジェイドが面白そうにくすくすと笑う。覆い被さるフロイドもまた可笑しそうにニヤリと笑い返す。 『もちろんジェイドがどんだけバカかってことだよ』  念入りな準備と愛撫を時間をかけたっぷりとジェイドに施すフロイド。すでに何度も身体を重ねている。ジェイドのイイトコロを善くしてあげるなんてフロイドには造作もないことだ。余裕そうにしていたのも始めのうちだけだったジェイドは途切れることのないフロイドの愛撫にその口からは嬌声しか出なくなってしまった。 「……あ、…はぁ。…フロ、イド。…フロ…イド」 「ジェイド、ここ好きだよねぇ」 「……や、……そこばっかり、」 「でも、い~んでしょ?もっと、ってぇ、腰うごいてるよぉ」 「……あ、…あっ、、、」 「おっと。まだだめ~」 「や、あ、……。も、イきたい…です」  「指でい~の?」  執拗にジェイドのナカを蹂躙するのはヒトより長くてジェイドより少しゴツゴツしたフロイドの指。前立腺をぐりぐりと押して刺激するのにジェイドがイきそうになるとふっと離す。そんなことを何度も繰り返されてジェイドの奥ももうとうにずくずくと疼いていた。 「…フロ…ィドの……くださ…い…」 「あは♡ でもだめ~♡」 「………ど…して…?…あ、」  イきたいのにイけない。奥に欲しいのにシてもらえない。身体中がフロイドの性器を欲しているのに与えられずジェイドはおかしくなりそうだった。 「だぁってジェイド、オレじゃないヤツ、ジェイドのナカに入れようとしたじゃん」 「………え?」 「ゴーストにとり憑かれたでしょ?最初にとり憑かれちゃったのは仕方ないから許してあげる」 「………」 「でももう一度とり憑かせようとしたのはダメ。許さない」 「………そんな…」 「それにオレがイヤだって言ったのに分かってくれなかったよねぇ?」 「…だって…ゴースト、ですよ?」 「ゴーストでも何でもダメ!ジェイドのナカに入っていーのはオレだけなの!!」 「……フロイド…」  困惑するジェイドに呆れ果てるフロイド。はあ~とため息を吐くとジェイドのナカの指を動かし始める。 「まぁだ分かってねぇみたいだから今日は指だけね。指だけでいっぱいイきな」 「…え、や、ああっ、、!」  もう何度イかされたのか。ジェイドの陰茎から吐き出される白濁は白から透明になりつつある。それでもジェイドは物足りなかった。……フロイドが欲しい。フロイドでなければダメだ。奥の奥までフロイドで満たされたいと疼く身体にようやく頭が理解した。 「………ふろ……いど………ごめん…なさい」 「……ん?」 「………ぼく…ふろいどが……いい……です」 「……」 「……ふろいど…じゃ、なきゃ………や…だ…」 「、、!!」  目尻に雫をため許しを乞うようにフロイドに視線を向けるジェイド。そんなジェイドにぶわっと感情が高ぶったフロイドはジェイドの身体を抱きしめその首筋にぐりぐりと頭を擦り付ける。 「…おせーよ。…ジェイドのばか」 「……すみません」 「…からだ、まだ平気?」 「………はい」 「……いれていい…?」 「……………きて、ふろいど」  ふわりと微笑むジェイドの瞼にちゅっとキスを落とし身体を起こすフロイド。 「…オレだけだから、ね」  そう囁くと奥深くまでジェイドに自身を埋め込んでいった…。  

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