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第1話
だれか教えてほしい。
十一年ぶりに再会したおさななじみの男が、俺の股間をなでているのはなぜなのか?
なぜ、男に触られてこんなに気持ちがいいのか?
……俺はホモだったのか?
いや、そんなはずはない。
そんなはずはない、はずなんだけど。
「……!」
思わず出そうになった吐息を殺す。
よかった。今の、気づかれていない。
ソラは、俺の胸に顔をうずめるようにして、ベッド脇の床に座っている。
下着の上から股間をなでる左手は、中身のこわばりに気づいてか、扱くようなものへと変化してきている。
インポのくせに、男に触られて勃つとか、ありえない。
これはきっと、酔っているせい。
ソファで飲んでいたところまでは覚えている。いかにも男子大学生ひとり暮らしの、ソラのマンションは適度に散らかっていた。初めて来た部屋なのに、懐かしくてよく知ってる感じがして、妙に居心地よかった。
合コンの居酒屋と違って、女の子に気を遣うこともなく、好きなことを好きなだけしゃべって、バカみたいに笑った。初夏の夜道を駅から歩いてきたから、冷たくて甘い酒がやたら美味しかった。
だから、飲みすぎたんだ。そうに決まってる。
春に別れた彼女の話をしているうちに、思い出して、落ち込んだ。落ち込んだせいか、飲みすぎたせいか、ひどくだるくなった俺は「眠い」と言ったんだっけ、それとも「眠いのか」と聞かれたんだっけ。
とにかく、ベッドに案内され、倒れこむように横になった。エアコンの効いた薄暗い部屋は気持ちよく、そのまま眠ってしまいたかった。
仰向けに転がされ、ジーンズのチャックが下げられたときも、何も考えてなかった。
子どものころのソラは、三人兄弟の末っ子で甘えん坊だったくせに、俺に関しては、妙に世話を焼きたがった。同じ年で、身長も体重もほとんど同じくせに兄貴ぶりたいのだ。ひとりっこの俺も、ふたごの兄か弟がいたらこんな感じかなとうれしかった。
「ほら、脱いで」
声をかけられ腰を浮かした。下着だけになった開放感に溜息をつき、大の字になる。
「メガネも外して」
お願い、コンタクトにして、と言う彼女と別れて以来、当てつけのようにメガネで過ごすようになっていた。外したメガネをソラに渡すと、ベッドの枕元でことりと小さな音がした。
遠ざかる気配に横を向くと、さっきまで飲んでいたリビングの明かりを消すソラの姿がぼんやり見えた。俺はなんとなく安心して目を閉じる。
「大丈夫、ダイキ?」
足音が近づいてきて、ベッドの横に座った。俺は目をつぶったまま頷く。声を出して返事するのが面倒くさかった。
「昔っから、まつ毛長かったよね」
覗き込む気配は動かないままで、しみじみとソラが言う。だからなんだというのか。
「そうか? 普通だろ」
気配がうるさくて顔を背けようとしたとき、ソラの手が俺の額に触った。子どもの熱を確かめる親のようで、ソラの熱い手は、意外と気持ちがよかった。次にその手は俺の頬に押し当てられる。一瞬なでるように動いた指は俺をいたるように優しいのに、なぜか落ち着かない気分になった。
やがて、指先は頬から肩に動いた。Tシャツ越しに何かを確かめるように、その手は降りていき、股間にソラの熱が届いた。下着の上から、形を確かめているような触り方だった。
何をしてるんだろう、とは思ったが、どうせ俺、インポだし、彼女にはそのせいで振られたし、自分でやってもあんまり勃たないし。そんなことより眠くて仕方ない。
ふいに、胸のあたりに重みを感じた。薄目をあけると、ソラのやつが人を枕がわりに頭を乗せていた。暑苦しい。
文句を言おうとして、自分が軽く勃ちかけていることに気づいた。ずっと触れているソラの指が気持ちいいことにも。
やがて熱い指が、下着の中に入ってきた。恥ずかしいというよりは、懐かしい感覚だった。小さいころはよくこんなことをした。互いの家に泊まって一緒に入った布団の中だったり、二人で入った風呂の中だったり。精通もない子どものころだったのに、ちゃんとイク感覚があったのが、オトナになってからは不思議だった。誰にも言ってはいけないと思っていた当時、なぜか後ろめたさはなかった。
懐かしく思っているうちに、なぜか自分のからだが完全に反応しているのに気づいた。
「ちょっと待て」
眠い目を無理に開くと、同時に胸の重さはなくなった。顔をあげたソラの顔はびっくりするほど近くにあって、メガネがなくてもよく見えた。見覚えがあるけど見慣れない、おさななじみの顔はうっとりと微笑んでいるように見えた。今にもキスしてきそうな距離と雰囲気だった。
ソラの顔立ちはもともと、美人で有名だった母親に似て整っている。それに加えて、生来の人なつこさと三男坊らしい気やすさもあり、小学生のころのソラは、男子からも女子からも人気があった。
今日の合コンでも女の子たちに、やたらと連絡先を聞かれていた。中学になってからかけはじめたメガネのせいか、暗そうとか冷たそうとか近寄りにくいとか、さんざん言われてきた俺とは大違いだ。
しかし、合コンの存在意義をまったく無視したソラは、脈のありそうな女の子たちには目もくれず、俺の隣に陣取り、ハイテンションで近況と思い出話をしゃべり続け、「俺んちで飲みなおそうよ」と自分のマンションに俺を連れて来たのだった。
下着の中の熱い手の動きは、本格的に扱くようなものに変わっていた。
「……ソラ、やめろ。これ以上は、ヤバい」
たまらなくなって、俺はおさななじみに呼びかけた。
「なんでやめるんだよ。気持ちいいだろ?」
耳元でささやかれた。めまいのような感覚に襲われ、脱力して目を閉じる。ぼんやりとした他人の体温が動き、もっと近づく。軽く、くちびる同士が触れて、同時に、手の動きも早く激しくなった。何度か繰り返されたくちづけは触れるだけのものから吸い上げるものに変わり、息苦しさに思わず口を開くと、逃さず濡れた舌が入り込んでくる。やわらかくくちびるを舐められ、舌をこすりつけられ、先手をとられた俺は喘ぐように息を継ぐしかなかった。
時折ソラの手が止まり、先端をなでられる。体液がぬるぬるとその部分に広げられて、快感にからだが硬直しそうになる。
「ここ、いいんだ?」
くちびるが離れ、なぶるようなソラの吐息が口元にかかる。のしかかる体温と体重、頬にあたるソラの髪の毛の動きすら、ぞわぞわと俺を刺激する。それは間違いなく、久しぶりに感じる、そして大人になってからは初めて他人から受ける、性的快感というやつだった。
もう何も考えたくない。考えられない。ただ、ただ、いきたかった。出してしまいたかった。
何度もくちづけられる。今度は軽く、チュ、チュ、と音をたてて。角度を変えて。何度も。下着はずり下げられ、手の動きは早さを増した。
ああ、もうすぐだ……。
ぼんやりと思った。頂点の直前の、この感じ。
自分のものではない熱い手に急かされて、俺は立ち止まることなく射精の感覚に身を震わせた。
もともと、俺にはあまり性欲がない。というより、セックスできない。そのせいで、大学入学当初から二年つきあった彼女とも別れた。
俺の不能に悩み、サークルの先輩に相談した彼女が、その先輩とそういうことになってしまったそうだ。
桜の下で、彼女は泣きながらそれを俺に告白し、先輩は「すまない」と俺に土下座した。
もとはといえば俺に原因のあることだ。許すしかなかったが、彼女と続けることもできなかった。
二人が正式につきあうことになったらしい、という話は、サークルを辞めた俺の耳にも入ってきた。先輩は悪い人ではないし、彼女は、とてもいい子だったから、本当は祝福すべきなのだろうが……。
情けなかった。男として。
すごく、情けなかった。
以来、もともと乏しかった性欲もほとんどなくなり、エロ動画を見てもぴくりともしない日々が続いた。
もうすぐ夏休み。そうなったら、あの二人を学校で見かけなくて済む。
そんなことだけ考え生きていたある日、大学の友だちが合コンの話をもってきた。バイト先のイケメンをメンツに入れたので、レベルの高い女の子が集まるという。
そこで再会したのが、バイト先のイケメンこと、おさななじみの青井空だった。
「彼女にしてもらって、こんなになったことあった?」
俺はけだるさに目を閉じたまま首を横に振った。
「……やっぱり」
ごそごそする気配で見ると、何が楽しいのか、立ち上がったソラは機嫌がよさそうな顔で、指についた俺の体液をティッシュで拭っていた。ベッド脇のくずかごにゴミを捨てると、箱ごとティッシュを渡してくる。なんともいえない気まずさに、俺は黙ったまま自分で後始末をする。
自分のものに触れると、まだ熱は冷めきってなかった。下着もひどい状態だ。思わず眉間にしわを寄せながら引き上げる。
「俺、帰る」
メガネをかけ、起きてジーンズを探すと、ベッド脇の床に、きちんとたたまれて置かれていた。
「ちょっ、待ってよ」
俺が起きて拾い上げたジーンズを、ソラは慌てたように取り上げる。
「なにするんだ」
「話があるんだよ!」
怒鳴るように言うと、ソラは立ったまま俺のジーンズをぎゅっと抱え込んだ。
いつの間にかデカく育っていたおさななじみに上から見下ろされると、平均身長とはいえヒョロガリメガネの俺としては腕力で勝てる気がしない。
「……話って?」
「帰らないって約束してくれる?」
「話の内容次第かな」
ソラは黙ったまま、しばらく突っ立っていた。ひどく悩んでいるような顔をしていて、俺は少し落ち着かない気分になった。
「あっちで話すか?」
まだ酒のあとを片づけていないリビングのソファのほうを示すと、ソラは黙ってベッドに座った。腕を引っぱられて、俺も隣に座る。
「ダイキ、お前、呪いとかって信じる?」
「……」
理系の学生の身としては否定するべきなのだろうが、ソラの口調には深刻さがあって、信じないと答えることはできなかった。
「俺ね、呪いがかかってるんだよ」
「……呪いって?」
「インポの呪い」
「インポ? お前が?」
ソラは頷いた。喜ぶべきなのか悲しむべきなのかよくわからない、複雑な気分になった。辛い気持ちはわかるし、仲のよかった、しかもモテそうなおさななじみがそんなことになって、うれしいわけではないんだけど、なにか心強いというか、若いインポ仲間がいた安堵感、というか……。
「呪い自体は、うちの家にかかってるんだけど……。うちって、古いだろ」
ソラの実家は田舎の地主で、蔵の中に古い甲冑のある、大きな古い家だった。石造りの蔵や、カイコを飼っていたという大きな屋根裏もあり、床の間には小ぶりの太刀が飾られていた。子ども心にわくわくするような魅力があって、怖いと思ったことはなかった。
俺の父は農機具メーカーのエンジニアで、いまだに田舎を転勤して回っている。幼稚園入園と同時にソラの地元に来た俺は、小学校四年の終わりまでその土地にいた。ソラとは初めて会った瞬間から気が合い、親友になった。しつけに厳しかったソラの母親にも俺はなぜか気に入られ、互いの家によく泊まるようになった。
夏休み、プール帰りの泳ぎ疲れた体に、裏山の竹林を通ってくる風が涼しくて気持ちよかった。あの広い縁側で二人並んで昼寝をしたことを、ソラと会えなくなってからも時々思い出していた。
あの土地にもあの家にも、もちろんソラにも、暗い記憶はひとつもなかった。
「俺、お前んちには何度も行ってるけど、そんな話聞いたこともないけど?」
「インポの呪いなんて、子どもにする話でもないだろ。でも、あのあたりでは有名な話なんだよ」
ソラは少し笑って俺を見る。共犯者を見るようなその目つきが気になった。
「……ひょっとして、その呪いと俺って関係ある?」
「やってみないとわからないけど、たぶん、関係ある」
なんとなく逃げたいような気分になってたが、聞かないわけにはいかない。
「呪われてるって、誰に?」
「戦国時代のお姫さま。うちの庭に、小さな祠があったの覚えてる?」
ソラの家の座敷からみえる庭のはずれに、石づくりの小さな祠があったのを覚えている。毎朝、そこに温かいお茶と炊きたてのご飯を供えるのは、末っ子のソラの役割だった。そういえばその祠は、おひいさま、と呼ばれていた。
「昔、うちのご先祖さまが、主君のお姫さまと恋仲になったんだって」
「なんだよそれ、お前んち、ご先祖さままでイケメンかよ」
「そういうわけじゃないと思うけど……。そのお姫さまは敵になりそうな武将に嫁入りが決まってて、ご先祖さまは、ただの人質じゃないか、それなら一緒に逃げようって言ったんだって」
身分違いの恋を貫こうとする、立派なイケメンぶりだ。その子孫なんだから、ソラが女の子にモテモテなのも当たり前だが、そのお姫さまに呪われる理由がわからない。
「でも、お姫さまはそれを断って、ご先祖さまに好きな相手と結婚しなきゃ呪ってやるって言って、お嫁に行っちゃったらしい。その後、お姫さまはすぐに病気で死んで、嫁ぎ先の武将は敵に寝返って……仕えてた主君の城は落ち、うちのご先祖さまは流れ流れて今いるところに落ち延びてきたんだけど、それ以来、うち、恋愛結婚じゃないとダメなんだって。政略結婚とか親が決めた婚約とか、できないんだって」
「できないって、何が?」
「恋愛っていうか、結婚の約束をした好きな相手じゃないと、エッチできないんだって」
「へえ」
エッチできない、というのは、インポになるということだろうか。なんだか嫌な予感がした。
「一族の男は、結婚の約束をした好きな女じゃないと勃たないし、一族の女も好きな相手とじゃないとできない」
「ちょっと待てよ。男はわかるけど、女の人は無理やりやられるってこともあるだろ?」
「それがさ……一族の女をレイプしようとしても、相手が勃たないからできなくて、それはそのときだけじゃなくて、相手は一生誰ともできなくなった上に不幸になるんだって。だからあの辺りでうちの女に軽い気持ちで手を出す男なんかいないよ」
でも、俺は呪われるようなことはしていないし、その呪いとは関係ないはずなんだけど……。俺のインポは、ソラと関係あるんたろうか?
怪訝な顔をしていたのだろう。ソラがこちらをじっと見た。
「憶えてない?」
「何を?」
ソラは俺のジーンズを横に置くと、俺の手をとり、ありえないことに自分の股間に押しつけやがった。……勃ってた。ガチガチだった。
「お前、自分、インポだって言ってたよな。まさか……」
「うん。俺たち、約束しちゃってるんだよ」
「……嘘だ」
「嘘じゃない。幼稚園のとき、お前は俺に『結婚しよう』って言った。俺も喜んで『結婚する』って答えた」
なんだかうっすら思い出してきた。そういうこともあったような気がする。いや、あった。
結婚は、仲良し同士がずっと一緒にいるためにするものだと聞き、親父が転勤族でもソラが大好きで離れたくなかった俺は、ソラにプロポーズしたのだった。
「その約束が成立してる証拠に、何人と付き合ったか知らないけど、ダイキは女の子とはできなかっただろ。彼女ともそれで別れたって言ってたよね。でも、さっき俺とは、できたよね?」
「あれをカウントするのか!」
子どものときやってた秘密の遊びの延長じゃないか、と気まずく思ったが、ソラの表情は真剣だった。
「だったら、なんで連絡くれなかったんだよ、ソラ……」
どうしたらいいかわからず、だからといってソラの顔も見れず、俺はうつむく。
小学四年生のとき、俺の父親の転勤で別れて以来、年賀状のやりとりは数年続いたものの、中学に入ると、それも俺からの一方通行になり、高校入学を知らせるハガキに返事はなかった。
俺はそれ以来、青い空を見るたびに、ソラのことをいつも思い出すようになった。返事が来なくても会えなくても、いつか再会したときに、俺もちゃんとがんばってたよって誇れるようになりたい、大事な友だちだった。
「いや、それは……」
うつむいた俺を見て、何を勘違いしたのか、ソラは落ち着きを無くした。
「だって、どうしたらいいかわからなかったんだ。……エッチな夢見ると、相手は必ずお前なんだもん」
「……えっ、小四のガキ相手にエロい夢見てたのかよ」
慌てて立ち上がり、逃げようとする。いくら男相手でもロリコンはヤバイ。
「ち、ちがっ! ちゃんと年相応に大きくなってた! 面影あったからいつもわかったし……でも、お前は気持ち悪いだろ、そういうの……そう思って……」
しょんぼりと、わかりやすく落ち込んだ顔を俺には見せる。昔もそうだった。大人たちやクラスメイト相手には意地を張って気を遣ってなんでもないふりをしても、俺の前ではめちゃめちゃ素直だったんだよな。
「お前は地味だけど、もともと顔はきれいだし、真面目で浮気しなそうだから、目の肥えたやり手の女子に青田刈りされて、さっさと結婚しちゃうタイプだと思ってたよ、俺がどんなに好きでも、さ。だから……」
「ああ、わかったから、もういいよ」
小学生のソラが現在にオーバーラップして、思わず背中を抱き寄せてしまった。
「でも、お前が約束の相手なら、いつかきっとまた会えると思ってた」
ソラは俺の手に自分の手を重ねる。
振り払えなかった。それどころか、自分の身体の中心がぴくりと動くのを感じた。……俺も勃ってた。ガチガチだった。
「試してみないか、ほんとにできるかどうか」
ソラは俺の手を取り、とても大事な宝物みたいに両手で包んで、自分の胸に押し当てた。なぜか俺の手は痺れたようになって動かせず、ソラがやりたいようにさせるしかなかった。
「男同士でどうやって?」と、いう言葉が浮かぶ。そんなことはエロ話の片隅で聞いたことがあるが、今は考えたくない。
「……できたら、どう、するんだよ」
それだけ、やっと言うことができた。
「結婚しよう」
「バカ、そんな、こと、できる、わけが……」
なすがままにさせていた俺の手の甲に、ソラが目を伏せてくちづけた。くちびるの温かさは感じられるのに、やっぱり手は動かない。それどころか、しびれはそこからどんどん体中に広がっていくようだった。
「じゃあ、ずっと一緒にいる」
ソラがうれしそうに笑う。そして、指の一本ずつにくちびるが触れる感触。そこから広がったしびれは、さざなみのように俺の皮膚を泡立たせ、ぞわぞわと体中の産毛が立ち上がる。
気持ちが悪いのか、それとも気持ちがよすぎるのか、自分でもよくわからなかった。きっとまだ酒が残ってるんだ。酔ってるんだ。
「どうしても嫌だったら途中でやめるから、試しにやってみようよ。ね、ダイキ」
互いの指を絡めあうように手をつないで自分の膝に乗せたソラは、俺の肩に頭を乗せた。そこからもさざなみが全身に広がる。
「こうしてるだけでこんなに気持ちがいいんだから、エッチしたら、もっと気持ちがいいよ」
俺の下半身は萎える気配はなかった。インポのはずの俺がこんなことになってるのは謎だが、ソラの話を信じるなら、相手が男でも女でも、俺たちは他の人とはセックスできない、ということになる。
本当は呪いなんかなくて、実はソラがホモで、俺がタイプだったというだけの話なのかもしれない。
「俺たち、他のだれともエッチできないんだよ。それがどういうことか、カノジョと別れたことのあるダイキならわかるだろ?」
ソラの声には切実な響きがあった。
そういえば、幹事役の友達に「今度の合コンに来る、バイト先のイケメンってどんな人?」と聞いたとき、モテるんだけど長続きしない、と言っていた。いいやつなのにな、と不思議そうに。
彼女と別れて何が辛かったかというと、寝取られた悔しさより、ひょっとしたら俺は一生誰にも触れることなく終わるかもしれないという孤独感だった。
友達や家族がいるなら寂しくはないのかもしれない。
でもそうだろうか。
転校して目の前に互いがいなくなれば、新しい人間関係を優先するようになり、仲のよかった友達もいつしか過去になる。友情なんて続かない。転勤族の父親を持った俺には、よくわかっていた。それに、ひとりっ子の俺にはきょうだいもいないし、親は先に死ぬ。
そうなったら、誰が俺のそばにいてくれるのだろう。
マンガを読んでもドラマや映画を見ても、誰かが誰かを好きになったり好かれたり、そんな話ばかりで、周りの友達もみんな、自分がそうなると自然に思っているようだった。
でも実は俺は、誰かを好きになることはなかった。好きだと言われたことも女の子とつきあったこともなく、高校生活を終えた。だから、大学に入って告白され、初めて彼女ができても、どこかしっくりしない感じがしていた。抱き合ってもキスをしても、彼女はなぜかひんやりしていて、どうしてこの子と一緒にいるんだろう、と思うこともあった。だから、彼女が先輩とそうなっときも、やっぱり、と思った。
やっぱり俺と一緒にいてくれる誰かなんて、どこにもいなんだ、と。
年をとって、独りで、誰にも気づかれずにいつの間にか死んでいる自分が、簡単に想像できて、心が冷えた。彼女と別れた春が終わって、夏が来ても、身体の芯がゆっくり凍っていくような気持ちがしていた。
だけどソラの顔を見ていると、その冷たさを忘れてしまうのはなぜだろう。
セックスしたらわかるんだろうか?
「一度だけでもいいから」
「……一度、だけ、な、ら」
「やった!」と声を上げたソラは、俺のメガネを外した。一方的に俺を抱きしめて、そのままベッドに転がる。足がしびれたようにうまく上がらずもたもたしていると、ソラのジーンズの足が俺の素足を掬い上げ、そのまま絡みついた。
ベッドの上で横向きになり、改めて互いの顔を見る。ソラのくちびるを見て、そういえばさっきキスしたっけ、と思った。ソラはこぼれ落ちるような笑顔で、俺の頬に手をあてた。また、しびれるような感覚が広がり、思わず目を閉じる。
「また、そんな顔して」
低く、押し殺すような声がして、肩を押された。仰向けにされ、くちづけられる。今度は最初から舌をねじ込んでくるような、激しいキスだった。思わず目を閉じる。ソラの体重が軽く下腹部にかかり、張り詰めた股間に痛みが走る。
「んっ……」
「ごめん。重かった?」
慌てたような声と同時に、重みがなくなる。目を開けると、ソラの顔は離れていた。
「だい、じょぶ……」
ほっとしたようにソラは笑い、服を脱ぎだした。
そうか、脱いだほうがいいのか。
俺も服を脱ごうとするが、身体が動かず、うまくいかない。Tシャツが腕から抜けずにもがいていると、「何やってるの」と笑いながらソラが手伝ってくれた。
「……ダイキ、こっちも脱がなきゃ」
下着を引っ張られ、動きづらい腰をどうにか上げる。下着が脱がされる感触に、思わずため息をつく。正確にいえば、脱がされるときに触れた、何気ないソラの指の感触に、だ。
しびれているのなら感覚は鈍るから、触られてもよくわからないはずだ。歯医者の麻酔と同じで。
なのに、ソラにはどこを触られているかはわかる。わかりすぎるほど、わかる。力の加減とかこすれ具合とか、増幅して伝わってくるようだ。
このときには俺も気づいていた。
さっきからの、体がしびれたような感覚――それは、自分がひどく興奮しているせいだということに。
要するに、腰が抜けるほど、俺は発情していたのだ。
「ダイキ、いいの?」
全裸のソラが俺の顔を、少し心配そうな顔で覗き込んでいた。
「な、に?」
「いや、俺はさ、どっちでもいいんだよね。ダイキが望むなら、なんつーか、えーと、押し倒されるほうでも」
なるほど。男同士だとそういう問題があるわけか。
しかし、俺は身体が動かない。さっき嫌なら途中で止めてもいいと言ったし、ならいいか、という腹もある。ソラなら、ひどいことはしないだろうし。
「むり。うご、かな……」
「えっ」
焦ったように、ソラの視線が動く。何か探しているのは、携帯だろうか。まさか救急車でも呼ぶ気か?
「だいじょ……」
「病院? 救急車? どっちがいい?」
冗談じゃない。首を横に振ってみせる。医者に、興奮しすぎて体が動かなかっただけです、なんて告白する羞恥プレイはごめんだ。
「そういうわけにいかないだろ」
俺はまた首を横に振り、どうにかソラの左手を掴んで口元に寄せると、舌をのばして指先を舐めた。
「い、から……」
言い終わる前に、ソラの目の色が変わった。手首を掴まれ、頭上に張りつけられる。くちづけしながら俺の身体をまたぐと、股間を擦りつける。体温がそこを中心に一気に広がった。
「ん、あっ」
思わず声を上げると、すかさず舌が侵入してくる。まるで突き立てるように、まっすぐ入りこみ、前後に動かされる。セックスそのもののようなキスだった。
その後もソラは、舌とくちびるしか持たない動物みたいに、俺のくちびるを吸い、歯茎を舐め、舌を甘く噛んだ。やっと離れたソラのくちびるは濡れて、薄暗い中で照明を反射している。ソラのくちびるを光らせているのは、俺とソラ、どちらの唾液なんだろう、とぼんやり思った。
続けて軽く、あごや肩にもくちづけられ、乳首にくちびるが触れたとき、俺の身体は勝手にぴくりと動いた。ついでに股間も反りを強くして、自分の腹を軽く叩いた。
ソラはそれに気づいたらしく、俺の顔をちらっと見て、本格的にそこを吸い上げた。吸いながら舌でくすぐって、ゾクゾクする寒気のような感覚に身をよじる俺のもう片方の胸に手を伸ばした。触れるか触れないかの絶妙な接触が、さらに俺を震わせ、声が出そうになるのを必死で堪える。だが、刺激にとがった先端を歯で軽くしごかれ、その我慢は吹き飛んだ。
「ああっ!」
その瞬間、まるで、もっと、とねだるように胸をそらした自分が信じられなかった。
気がつくと、ソラが呆然としている俺の顔を見つめている。これ以上ないほど上機嫌な顔で、目つきにかすかな狂気のようなものも感じられる。
「……なに、そのエロい顔」
再びソラがのしかかってきた。その身体を押しのけようにも、相変わらず身体はうまく動かない。
「ダイキ……ダイキ……」
耳元で何度も名前を呼ばれる。うわごとのようなその囁きと吐息の熱さに、背筋が震える。それが本当は悪寒でない証拠に、俺の股間は痛いほど張り詰め、涎のような先走りを滲ませた。
「んっ」
またくちびるをふさがれる。深く貪られながら、今度は足を開かされる。股間が押しつけられて、熱い二つの身体の間で、それ以上に熱く硬い肉が触れ合う。ソラのそれが、俺の幹に先端を押しつけ、ぬめぬめと動いた。
「んあああっ!」
反射的に身体が仰け反る。
「ね、ダイキ、入れていい?」
今度は上体を起こし、密着させた腰をゆっくりこすりつけるように動かしながら、ソラが俺の顔を覗き込む。中途半端な刺激に生殺しにされ、のた打ち回っていた俺は、思わず首を縦に振る。
もう、なんでもいいから早く終わらせてほしかった。
「ほんとに?」
片肘をベッドについたソラは、俺の頬をもう片方の手で撫でながら、目を細める。なんでそこまで幸せそうな顔をするのか、よくわからなかった。だって俺、男だし。一度だけなのに。
俺の頬を撫でるソラの、愛しげとしか表現しようのない触れ方に胸が苦しくなる。何だかいたたまれなくなって、俺は目を閉じた。密着した肌の間にどんどん何かが溜まっていく。
「は……や、く」
終わらせなければ、取り返しのつかないことになる。そんな気がした。
俺は顔をそらしてソラの指から逃げようとした。ソラはそんな俺のあごを片手で掴むと改めて体を重ね、くちびるでくちびるをこじ開けた。触れあったままの腰の動きに、体温がまた上がり始めた。
軽く息をつく音が聞こえ、急にソラの重みがなくなった。カチッとプラスチックのふたが外れるような音がして、目を開けると、ソラはチューブから何かを手のひらに出していた。左手のそれを右の指ですくい、俺と目が合うと照れたように少し笑った。
「な、に」
「ローション」
言葉のあと、立て膝の俺の奥に冷たいものが塗りつけられた。くるくると周囲を撫でられ、落ち着かない気持ちになる。やがてソラはぐにぐにと核心をいじりはじめるが、突入には至らない。
ソラの股間を見ると、若干勢いがなくなっていた。あくまで若干で、まだやる気はあるようだ。思わずため息をつく。
「気持ちいい?」
「ば、か」
あほな質問に萎えかけた俺に、ソラは焦ったようだった。ローションがついた手で俺の股間を性急にしごく。気持ち良くないわけではないのだが、少し痛い。
「い、た……」
顔をしかめた俺を見て、ソラはためらいなく股間に顔を寄せてきた。萎えかけていた俺を片手で掴み、先端を口に含む。
その感覚が、というより、その行動が、ためらいのなさが、自分でも予想しなかったほど俺を押し上げた。
すぐにソラの動きは大胆になり、快感も増した。根元にキスを降らせたと思えば、茎を舐めながら先端にたどり着くと、くちびるで扱くような動きをする。睾丸をやわらかく吸われたときには、思わず声が出た。すぐにまた、達してしまいそうだった。
俺を咥えながら、ソラがまた奥に指を伸ばしてきた。いつの間にか足したローションをなじませるようにマッサージしてから、ゆっくりと入ってくる。違和感はあるが痛みはない。それよりも、前方からの快感が強く、俺はシーツを握り締めた。
気がつくといつの間にか指が増えていた。痛みはないが、圧迫感が強い。そのせいで変な声が出てしまいそうになる。必死でこらえる。
「声、出してもいいのに」
どこか余裕のある声で、ソラが俺の足のつけ根を舐めながら言う。
「や、だ」
これだけははっきりと答えることができた。
ソラは無言で俺の左足を抱え上げ、自分の肩にかける。それから深く俺を吸い込み、指を深く俺に沈めた。中でゆっくりと動かし、壁をリズミカルにノックする。音もないノックとともに、風船をふくらませるように、何かが俺の中で大きくなっていき、ぱちんと割れて中身が流れ出してきた気がした。
「あああっ!」
破裂する感覚と同時に流れ込んできたのは、味わったこともない、しかしまぎれもない快感だった。汗が肌をじわりと湿らせる。
何が起こったのか、よくわからなかった。呼吸も鼓動も、ただ、早かった。噴き出した汗が熱を奪って蒸発していく。
ぬるりとソラの指が抜かれ、このとき、三本の指が入っていたことにやっと俺は気づいた。
改めて、膝が開かれる。今度は両足を腕ですくわれる。太腿に触れるソラの腹や、あてがわれた先端の感触に、俺の身体を軽い震えが走った。
予想に反して、ソラはゆっくり入ってきた。緩慢といってもよいほどだった。痛みはない。痛みというより、広がり切った苦しい感じはする。が、ソラは入ったまま、「ん……」とひと声唸り、目を閉じて動かない。俺の両側についた腕でソラは自身を支えているから、俺にソラの体重はかからない。そういう意味では大丈夫なのだが、ひざをすくわれて体を折り曲げられた姿勢で長時間は難しいだろう。
ソラの腕を軽く叩く。ソラははっとしたように俺を見た。なんともいえない、切なげなその表情に、なんだか腰の裏側がゾクゾクする。
「ダイキ、痛い」
何のことかわからなかった。
「痛くて動けない。締めすぎ」
そんなことを言われても困る。とりあえず身体を離そうともがくと、ソラは体重をかけて押さえ込んできた。
「もう少し、このままでいさせて」
と、くちびるをあわせる。また舌が入り込んできて、俺の中のソラが少しよじれた。そのわずかな動きにつられるように、あの寒気に似た感覚が湧き起こってくる。
その感覚をごまかすように、うまく動かない舌先をこすり合わせ、くちびるを吸う。溺れるような息継ぎをしながら、ソラを貪る。
そうやっているうちに俺の身体が拡がったのか、それとも締めつけに慣れたのか、ソラは少しずつ動くようになった。痛みはないが、押し入られるたびに、肺の中の空気も押し出される。息が上がる。
自由に動けるようになると、ソラは同じ動きを繰り返した。俺の身体の中のどこかにソラが当たり、しびれを生む。それがだんだん大きくなり、腰全体を支配するようになった。そのころには、ソラがわざとその一点を狙っているのに気づいた。
俺は出そうになる声を押し殺そうとして、呼吸困難になりかかっていた。
「声出して。声、聞きたい」
強くそこを突かれてからはもう、止められなかった。
「あっ、あっ、あ……」
荒くなった呼吸が、声を上げることで少し楽になった気がした。悲しくもないのに、涙が目尻に溜まる。ソラの動きも加速する。俺の中で、快感もふくらんでいく。射精とは違う形の絶頂の種子が芽吹き、俺の身体を侵していく。
「ダイ……、俺、いきそう」
歯を食いしばり、泣きそうな声で、ソラが訴える。
「んあっ、あっ、お、れ、も……」
もう少しだった。身体が作り変えられるような快感の終わりが。その頂点が。
「うっ、あ、あああっ!」
俺の身体が内側から大きく震えた。一度。二度。
「んっ、んんん」
ソラがのけぞる俺を抱きしめて動きを止めた。俺の中で、ソラが脈打つ動きをしていた。どく、どく、どく、とまだ敏感な奥底をくすぐり、余震のような小さなふるえが、もう一度きた。
それで終わりだった。
夢を見ていた。
と、思った。
夏だった。
ソラの、あの田舎の古い家の座敷の、ひんやりする日陰で、俺はソラと昼寝をしていた。
俺の手は暑苦しくもがっちりとソラに握られていて困った。これじゃどこにも行けない。
寝転んだまま、つないだ手を持ち上げてみる。俺たちは二人とも幼い小さな手をしている。子供の手だ。
「ほんに、すまんのう」
ふいに頭のほうから声をかけられた。そちらに目をやるが、ぼんやりとしてよく見えない。和服を着た、きれいな女の人が枕元に座っていた。
「このこがあまりにもねがうのでなあ。つい、かなえてやってしまったが、ぬしにはさしつかえもあろう」
幼い俺は寝ぼけてはいたが、ソラのお母さんではないなと思った。声が違う。
「いまなら、このてをはなすことはできるぞ」
俺は声の主のほうを見る。
もう一度、俺はつないだ手を持ち上げてみた。ソラはぐっすりと、幸せそうな顔で眠っている。
「……てください」
俺は、なんて言ったんだろうか。
残念ながら、覚えていない。
夢の話だから。
目が覚めると、あちこちが痛かった。
ソラの予備らしい、新品の下着を一応つけてはいたが、腰も痛いし、妙な筋肉痛もある。繋がって拡がっていた場所の、ぴりぴりするような痛みも残っている。
もう少し寝ようと寝返りをうち、幸せそうなソラの寝顔に直面したら、無性に腹が立ってベッドから蹴落としてやった。
「……いたいよダイキくん」
Tシャツと下着姿で床の上に正座したソラは、叱られた子犬のような目で訴える。
「人が動けないのをいいことに、好き勝手しやがって……俺のほうが痛いんだよ!」
「だって……」
「だってじゃない! 寝る!」
俺が横になろうとすると、当然のようにベッドにあがってくる。
「お前はそこだ。邪魔するな! ステイ!」
と言ったところで聞くわけがなく、後ろから抱きつかれるように寝るはめになってしまった。
「……なんか当たってるんだけど?」
「これは条件反射だから、気にしないで」
「サカリやがって。二度目はないからな」
「わかってるわかってる」
返事が軽い。軽すぎる。
「離れろってば」
「はいはい」
申し訳程度に体温が遠ざかり、「んー、いい匂い」というため息まじりの小さな声が後ろから聞こえる。やばい。首筋に息がかかる。それだけでもう、腰の裏がしびれてくる。
「……あっ」
今度はうなじを噛まれた。舐められて、もう一度噛まれる。それだけで、俺は腰が抜けたように力が入らなくなる。触れられてもいないのに立ち上がった乳首が、Tシャツの生地に触れるだけでどうにかなりそうだった。
必死にこらえていると、後ろから伸びてきた指が的確にそこをこすり上げる。
「乳首立ってるね」
「だから触るなっ……ああっ」
ソラの手の動きに、腰を後ろに突き出すような反応をしてしまうと、今度は股間をなでられる。
「こっちも勃ってるね」
で、なぜか起こらないはずの二回戦目が始まったわけだが、それについては省略する。
「ソラ、お前、ほんとに呪いとかあると思ってる?」
「うん。だってほんとに俺、インポだったし……」
俺たちはベッドに並んで寝転がっていた。あの夏の夢みたいに。
「そもそもあれって呪いなのか?」
「呪いだって昔から言われてるからさ……」
ふわふわと眠そうにソラが答える。そんなソラを見ているだけで、俺は温かい気持ちになる。もう、ひとりで凍えることはないだろうという確信が湧いてくる。
昔は恋愛結婚なんて邪道だった。それなりに大きな家なら、政略結婚というほどでないにしろ、親の決めた相手と結婚するのが当たり前で常識だった。
そんな世の中でなら、あのお姫さまの願いは、確かに「呪い」でしかないだろう。好きな男と結ばれないなら、せめて好きな男には好きな相手と幸せになってほしいという願いは。
「バカだなお前、あれは……」
横を向くと、ソラはもう寝息を立てている。幸せな子供みたいな顔で。
「祝福っていうんだよ」
(了)
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