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眠気なんてどこかに行ってしまってマットの上であぐらをかいてその膝に腕を付く。
だが、目が覚めてしまうと埃っぽくて汗の臭いの染み付いた場所にこのまま居るのはバカらしくなって倉庫から出た。
教室に戻っても教師から嫌味を言われるだけなのはわかりきっている。
「どうしよっかなぁ……」
スラックスのポケットに手を突っ込みながらペタペタと踵を踏んだシューズを鳴らして歩いた。
開いている窓枠に肘を付いて外を見ると、ちょうどうちの教室が見えて観察してみることにする。
数学教師が授業をしている中、多くの奴がうわの空でコソコソ話していたり、寝ていたり、とにかく授業なんて聞いていない奴が多い。
なのに、教卓の真ん前の宮部だけが真剣な顔で教師の顔を眺め、真面目にメモを取っていた。
「うーわぁ……ねぇわぁ」
呟きながら脱力して窓からダランと両腕を伸ばす。
卒業していった三年の教室なら静かか?と思いつつ、そこまで歩くのは面倒だった。
「……平和」
ぽかぽかと暖かい日差しを受けて目を閉じる。
だが、窓枠が食い込んですぐに体を起こす。
「居たっ!!村瀬っ!!」
「ハロー」
ちょうどそのタイミングで廊下の向こうから凄い勢いで速歩きしてくる工藤にヒラヒラと手を振って笑いかけた。
暇だったしちょっとくらい付き合ってもいいかなって軽い気持ちで。
「お前、今日から一週間補充だからな!」
「はぁ〜?ヤだよ」
ベッと舌を出すと、工藤は俺の真正面に来て真面目な顔で見上げてきた。
「補習じゃない。補充だ。嫌なら留年だぞ」
「はぁ!?」
留年!?それは嫌だ!!
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