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「だから、何で謝んの?」
聞いても凛華はふるふると首を振るだけ。
「……凛華、むしろ傷つけたのは俺じゃない?」
その顔を覗き込もうとすると、凛華はパッと顔を上げた。
眉を寄せて泣きそうな顔で首を振る。
「この前の先輩……あの人と出かけたって聞いた日、琉生の様子がいつもと違ったし」
言葉を選ぶようにゆっくり凛華が口を開いて少し目を伏せた。
「え?何か違ったか?だってアキちゃんとはただお茶して買い物しただけで特には……」
あの日を思い出そうとして記憶を遡った俺はあの後宮部を家に連れて帰ったこと、好きかもしれないと意識したその気持ちまで思い出してしまって口をつぐむ。
「やっぱり……何かあったんだ」
力なく笑う凛華にも何も言えそうになかった。
下手なことを言ったらむしろ泣く気もするほど、俺は俺の感情をまだ整理しきれていない。
凛華は気の合う大切な友達だけど、宮部の好きな相手で、宮部を好きな俺は凛華が恋敵にも見える訳で……。
凛華を目の前にして頭の中は混乱どころじゃない。
あの宮部から好意を寄せられているなんて羨ましい以外の何物でもないし、もし、凛華が俺なんかじゃなくあいつに目をやったらくっつくかもなんて……考えるだけで辛すぎて立っていられそうもない。
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