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「とりあえず、これ。お前の荷物。急に走るから勝手に突っ込んだけど文句言うなよ」  ドサッとリュックを降ろすと、宮部はリュックに視線を移してまた黙り込む。 「お前が凜華好きなのはわかってるから……」 「は?」  ぽかんとしながらこっちを見られて俺は宮部に背を向けるとその遊具に凭れかかって体重を預けた。 「凜華を忘れろとか言うつもりはなくて……」 「ねぇ」  ぼんやりと星も見えない空に向かって自嘲気味に話していた俺の肩が掴まれて、俺もさすがにびっくりする。 「なっ、急に……」 「どうして澤部さんが出てくるの?」  四つん這いになって俺の肩を掴んでいる宮部がじっとこっちを見てきた。 「は?だってお前が好……」 「僕、そんなこと言った?」 「はぁ?」  ちょっと怒っているような宮部の声に少したじろぎながらも考える。  宮部に好きな人が居ると知って……こいつの口から凜華の名前がよく出てくるからそう思って……あ、俺が勝手にそう思っただけか?  思い込みだと気づいて宮部を振り返ると、宮部はため息を吐いてその狭い遊具の中でまた尻を付けた。 「ちょ、待った!じゃあ、お前の好きな奴って誰だよ!?」  その遊具に俺も上半身を突っ込んで顔を近づけると、宮部は少し仰け反って顔を背ける。 「おいって!」  その腕を掴んでこっちを向かせた宮部は空いている腕で慌てて顔を隠した。

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