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第1話
……ス……タ……
リッ……タ……
……ヴァ……ス……リッ……ター
声が聞こえる。
俺を呼んでるの?
「ヴァイスリッター!」
「わっ!」
飛び込んできたのはサラサラ流れる金糸の髪。
青い青い、空のような瞳。
「良かった。気がついてくれて。もう三日も目覚めなかったのですよ」
俺は……
事故に遭った?何も記憶がない。
目の前で心配そうに俺を覗き込んでいる青年は、誰?
「どうされましたか?ヴァイスリッター」
銀の糸で美しい刺繍の施された緋色の服は、まるで中世の……
そう。
騎士のようだ。
「あぁ、すみません。職務中ですが、ヴァイスリッターの事が心配で駆けつけてしまいました。私の任務につきましては、部下に引き継ぎましたのでご安心を」
はにかんで小さく笑った。
「誉れ高き空の騎士・副団長がこんな事ではいけませんね。ですが、あなたの事が心配で任務も手につかなかったのです。どうかお許しを」
彼は本当に、騎士?
「どうしましたか?ヴァイスリッター、私の顔に何かついていますか?」
「あの……俺」
まじまじと見つめる金髪の彼に、思いきって問いかける。
「人違いではないですか?俺、ヴァイスリッターという名前じゃないです」
生まれも育ちも日本。
どこをどう見たって日本人。
外国人に間違われた事は、人生で一度もない。
「ヴァイスリッター?」
「ですから、そんな名前じゃ……」
「何を仰っているのです?ヴァイスリッターは、シュヴァルツリッターと並ぶ騎士の称号。最高位の騎士の証ではありませんか」
えっ?
「俺が騎士?」
「あなたは誉れ高き空の騎士・騎士団長様ですよ」
「エエェェエエエーッ」
俺が!
「騎士ィィィーッ★!?」
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