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第23話

「お気づきになられましたか」  抑揚のない。 「全てお察しの通りです」  感情を喪失した声が響いた。   功績 「あなたのこれまでの功績と引き換えに」   刑罰 「裁判は敢えて行わない」   名誉 「名誉と偽って」   目隠し 「ここであなたを銃殺する」  全部、最初から仕組まれていた。 「あなたの死は病死だと公的には発表します」  ダッダッダッ  色濃い硝煙。  機銃を装備した兵士達が壇上に並んだ。その後ろには顔色一つ変えぬ大臣達が座っている。  そうか……  そういう事だったのか……  ジャンダルム七賢者  兵士の姿と引き換え引き替えに、彼らは姿を消していく。  大臣の地位と権力を利用して、安全な場所へ避難した。  少し前まで彼らの座っていた場所に、銃を構えた兵士達が居並ぶ。  権力を掌握するために、七賢者のうち誰か、もしくは複数人が俺を陥れた。  …………のだと、そう思っていた。  だが。  彼らの目的は、権力の掌握ではなかった。   掌握ではなく、排除  見ただろう。俺の一声で兵士が跪いた。  ヴァイスリッターの権威だ。  将来、己が覇権を確固たるものとするため、脅威となるであろう権力をまだ若い芽のうちに摘み取る。  ヴァイスリッターは、七賢者の権力保持に対抗する脅威そのものだったんだ。  犯人は一人じゃない。  七賢者全員が真犯人だった。 「なぜ、あなたは逃げないのですか」 「おかしな事を聞きますね。ヴァイスリッター」  灰青色の制服。  彼は跪いたままだ。 「あなたが『跪け』と命じたのですよ」 「では命令を解きます。逃げて下さい」 「どこへ?」  えっ……  どうして、そんな事を聞くのだろう。 「刑務官。その中でも、私は最下層の貧民街出身の死刑執行人です。虐げられ、差別され、それでも生きていくためには金が必要で、私は金で政府に買われました。私は人間ではない。消耗品ですよ」  声に抑揚はない。  悲しんでいるとも、恨んでいるとも違う。受け入れているのでもない。  ただ、何もないのだ。  何もないから、悲しみもない。  空虚な瞳は何も映さない。  透明でもなければ、混濁でもない。濁りのない、何もない目。ただそこにあるだけの瞳。 「消耗品は捨て駒です。貧民街のものは、そうやって死んでいく。命を買われて、利用されて、不要になれば、ある日突然捨てられる。ただそれだけの事です。私達は生きていない。生きる事を認められていない。この世界のどこにも、居場所なんてないのですよ」  ゆえに…… 「私に逃げ道はない」

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