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由宇 ご乱心の朝

翌朝6時30分由宇は夜勤の看護師、牟呂雫(むろしずく)とバトルしていた。 「嫌なものは嫌。熱なんてそのうち下がる!」 「そうも言ってらんないんの!さっきの検温39度1分!まだ悪寒あって手足冷たいの分かる?このままんだと40行くってっっ」 「知らない!」 「そんなんじゃ朝ごはん無理だよね?」 「いらない!吐きそうだし」 「いるいらないんじゃなく食べて栄養つけて治せ。そのためにはいったん熱下げて体力温存しよう。な?」 「い・やっ!」 「こうなったら無理矢理やる」 夜勤看護師牟呂は座薬を入れようと由宇の下半身に手を触れた。 「やだーっっ」 その時、由宇が手を出しガリっと牟呂の手の甲を削り、真っ赤な血が流れ出た 「…っ!うわっ…」 由宇は枕を投げ夜勤看護師にぶつけた 「ちょ…っ、由宇くんっ」 「消えろ!」 牟呂は断念し、由宇の部屋から消えた。 「どうしたん?しー先輩!手、血が。手当します」 「え?雅宗(まさむね)早いね?さんきゅ。これは由宇くんにやられたんだよ。あの子後で爪切っといてくれる?先生たちにやるとコトだから」 「いや…由宇くん気になって早よ目覚めてもうて…来たんやけど、由宇くんご乱心やったんか。おつかれです」 「あと、変わりに座薬挿してやって?たぶんオレと戦ったからさらに体力消耗してるはず」 「分かりました。ほんなら行ってきます」 「由宇くんおはようさん?お熱、高なったってしー先輩から聞いたで」 部屋に入ってきた周防に額を触られて、由宇はむず痒い気分になり苦笑を浮かべた。 「早いね、周防さん。まだ7時前だけど…」 「由宇くんが心配でな、眠りが浅かったんや」 「心配してくれたんだ?てかしーって誰?」 「そりゃ心配するやろ?受け持ちなんやから。しー先輩は今日の夜勤さんで牟呂雫さん言うねん。ちなみに俺の看護大学の一個上の学年やった人でサークルも同じやってんけど、話すと長なるからまた機会あったら話したるな。由宇くんはしー先輩とはじめましてやったから緊張したんかな?」 「分かんないけど、嫌だった」 「そうかぁ。嫌やってんな?なのに脱がされたから暴れたっちゅうことやな?状況は分かった。さ、由宇くんおしりにお薬挿れよな?ちょっと違和感あるやろうけど、熱下がってだいぶ楽になんで?」 「飲むやつがいい」 「気持ち悪いんやろ?夕べと違って顔色悪いでそれ吐くやろ?それに吸収が下からのが早い。摘便耐えれたんやからいけるって」 「う〜…周防さんが言うなら分かった」 「んじゃ挿れるで?」 由宇は左を向き横たわった。 「ぁ…やぁあ…指まで入れたぁっ。うー…本当に嫌な感じ」 「よし。入ったで?飛び出し防止で入れなあかんねんごめんな。でも偉いやん。泣かんかった」 「そんなしょっちゅう泣かないし」 「せやな。また寝るまでおったるから寝り?」 「うん」 周防は由宇の背中をさすり、由宇に 「由宇くん、よっぽど嫌やったんやろうけどまたしー先輩に会ったら謝っときぃ?怪我しとったで」 「うん…」 「ちょっと寝てご飯は無理やろうけど、アイスとか口あたりのいいもん食べたら爪切ったるな?」 「自分で切れる…」 「危険防止で刃物持たせれんから、俺に任しといて?」 「敵わないなぁ、周防さんには」 「我が強いのがウリやねん。さぁ寝ぇや」 周防は弟を見るようなあたたかな目で由宇を見つめ、時間が許すまで由宇に付き添った。

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