125 / 1150
由宇 ご乱心の朝
翌朝6時30分由宇は夜勤の看護師、牟呂雫 とバトルしていた。
「嫌なものは嫌。熱なんてそのうち下がる!」
「そうも言ってらんないんの!さっきの検温39度1分!まだ悪寒あって手足冷たいの分かる?このままんだと40行くってっっ」
「知らない!」
「そんなんじゃ朝ごはん無理だよね?」
「いらない!吐きそうだし」
「いるいらないんじゃなく食べて栄養つけて治せ。そのためにはいったん熱下げて体力温存しよう。な?」
「い・やっ!」
「こうなったら無理矢理やる」
夜勤看護師牟呂は座薬を入れようと由宇の下半身に手を触れた。
「やだーっっ」
その時、由宇が手を出しガリっと牟呂の手の甲を削り、真っ赤な血が流れ出た
「…っ!うわっ…」
由宇は枕を投げ夜勤看護師にぶつけた
「ちょ…っ、由宇くんっ」
「消えろ!」
牟呂は断念し、由宇の部屋から消えた。
「どうしたん?しー先輩!手、血が。手当します」
「え?雅宗 早いね?さんきゅ。これは由宇くんにやられたんだよ。あの子後で爪切っといてくれる?先生たちにやるとコトだから」
「いや…由宇くん気になって早よ目覚めてもうて…来たんやけど、由宇くんご乱心やったんか。おつかれです」
「あと、変わりに座薬挿してやって?たぶんオレと戦ったからさらに体力消耗してるはず」
「分かりました。ほんなら行ってきます」
「由宇くんおはようさん?お熱、高なったってしー先輩から聞いたで」
部屋に入ってきた周防に額を触られて、由宇はむず痒い気分になり苦笑を浮かべた。
「早いね、周防さん。まだ7時前だけど…」
「由宇くんが心配でな、眠りが浅かったんや」
「心配してくれたんだ?てかしーって誰?」
「そりゃ心配するやろ?受け持ちなんやから。しー先輩は今日の夜勤さんで牟呂雫さん言うねん。ちなみに俺の看護大学の一個上の学年やった人でサークルも同じやってんけど、話すと長なるからまた機会あったら話したるな。由宇くんはしー先輩とはじめましてやったから緊張したんかな?」
「分かんないけど、嫌だった」
「そうかぁ。嫌やってんな?なのに脱がされたから暴れたっちゅうことやな?状況は分かった。さ、由宇くんおしりにお薬挿れよな?ちょっと違和感あるやろうけど、熱下がってだいぶ楽になんで?」
「飲むやつがいい」
「気持ち悪いんやろ?夕べと違って顔色悪いでそれ吐くやろ?それに吸収が下からのが早い。摘便耐えれたんやからいけるって」
「う〜…周防さんが言うなら分かった」
「んじゃ挿れるで?」
由宇は左を向き横たわった。
「ぁ…やぁあ…指まで入れたぁっ。うー…本当に嫌な感じ」
「よし。入ったで?飛び出し防止で入れなあかんねんごめんな。でも偉いやん。泣かんかった」
「そんなしょっちゅう泣かないし」
「せやな。また寝るまでおったるから寝り?」
「うん」
周防は由宇の背中をさすり、由宇に
「由宇くん、よっぽど嫌やったんやろうけどまたしー先輩に会ったら謝っときぃ?怪我しとったで」
「うん…」
「ちょっと寝てご飯は無理やろうけど、アイスとか口あたりのいいもん食べたら爪切ったるな?」
「自分で切れる…」
「危険防止で刃物持たせれんから、俺に任しといて?」
「敵わないなぁ、周防さんには」
「我が強いのがウリやねん。さぁ寝ぇや」
周防は弟を見るようなあたたかな目で由宇を見つめ、時間が許すまで由宇に付き添った。
ともだちにシェアしよう!