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第5話
会場からなんとなく外が視界に入り
【セウス王子万歳!祝復活】だの
【おかえり愛息子!父は愛してる】
【私はやめたほうがいいって止めたよby兄より】
って書いてある垂れ幕があり速攻衛兵たちに声をかけて数人の兵で撤去してもらい術師に綺麗に焼いてもらった
燃え尽くしたのを確認して戻ると
セウス王子奇跡の復活と題し
あの黒歴史を劇にした演目をやろうとしていたので
即刻やめさせた帰りたい
そう嘆いていると肩を叩かれた
「お久しぶりですセウス様。お元気そうで何よりです」
振り返ると知らない人物がいた
サイドに流した長い白髪が前で結んで垂らしている
どこか儚げで美形だった
「どうかなさいましたか?王子」
「いや、あの」
これはまずい招待客の顔がわからないなんて
基本的に王族関係者は美形が多いが
こんな綺麗な人はいただろうか
「ふふっ、そう不安がらないでくださいませ。……お久しぶりにお会いできて嬉しく思います」
儚げな表情から慈愛を込めたような眼差しで見てくる
居た堪れない気持ちになる
「すみません。頭をぶつけたせいか大事なあなたのことを忘れてしまったかもしれません」
「お気になさらないでくださいませ。仕方のないことですから、私のことはノマドとお呼びください」
手を取られ両手で大事そうに包まれる
なんだこの展開はついていけない
でもなぜだろうひどく懐かしくて
胸が苦しい
「ノマド……….ノマドはいつ出会ったんだろうか?失礼を承知で教えてもらえないかな?」
「そうですね。教えてあげたいのはやまやまですが、ぜひいつの日か…いつの日か思い出してもらえれば嬉しく思います。どうかご自身をご自愛くださいませ。あなたが誰かを思うようにまた誰かもあなたを愛しく思うとこを」
「それってッ!?」
今なにか大事な機会な気がする第六感なのか
危機感なのかこの衝動で胸が張り裂けそうだ
なのに問いかけようとしたら突然中央でパフォーマンスをしてた雑技団の火の輪くぐりをしていた虎が楽団近くに着地し、それに驚いたバスドラム演奏者が強く叩いてしまい一同驚き静かになる
それに慌てて一礼し演奏を再開した
そして視線を戻すと先程いたノマドはいなくなっていた
….なんだったんだ
でもまた会える気がする
その時こそこの胸に残る感情を
解き明かせたいと思った
「如何なさいましたかセウス王子?お加減でも悪くなりましたか?」
いつのまにかやってきたログナスが心配そうに
声をかけてきた
ずっと業界の大物たちと応対してただろうに疲れを感じさせない男だ
「いや、大丈夫だ。ログナス、招待客の中にノマドって人いるの知っているか?」
騎士で警護も兼ねているログナスなら招待客の名簿は把握しているだろう
そして幼い頃からよく一緒にいたログナスなら
もしかしたらノマドなる人物を知っているかもしれない
「ノマド……ですか?お間違えなく?」
「う、うん。知ってる?」
「…申し訳ございません王子。私はノマドなる人物を存じ上げません」
「えっ!?招待客にもいないの?さっき僕と話してた人物だよ」
「招待客の名簿は記憶しておりますが、おりませんね。名を偽っているか他の要因があるかも知れませんすぐ警備を強化いたします」
ログナスはどこかを見つめ合図を出す
きっと騎士や衛兵間の緊急連絡を伝えたのだろう
「先程話されたとおっしゃられましたが、いつ頃でしょうか?」
「ついさっきだよ。楽団がミスする瞬間まで話していたけどその際視線を外していたらいなくなってた」
「……失礼します。…魔術による干渉はないようですが安全が確認されるまでお離れにならぬようお願い致します」
僕の頬を覆うように抑え手で包み
確認のための動作だが緊張してしまう
よくもこう恥ずかしいことを自然にできるんだか
まぁログナスだしな変に反応はしないでおこう
「….私はずっとセウス王子から目を離しませんでしたが、知らない人物とお話をなさっているのは確認しておりません。もしかしたらとても魔術が卓越した人物かもしれません。…お守りすると誓っておきながらこの体たらく、面目ありません」
「い、いやログナス僕の勘違いかもしれないし大丈夫だよ。ここにはほかに城の魔術師たちや騎士、騎士団長もいるんだから国一番の安全地帯だよ?だから大丈夫!」
「それでも、いえ……いっそう気を抜かず励みます。お側を離れないのでセウス王子も何かお気づきがありましたら仰ってください」
うーん過保護が増したか
まぁ当然と言えば当然だ真面目なログナスだ
プライドもあるだろうし任せよう
そのあとグダグダと会は続き
ユダの台本通り締めくくりの挨拶をして
この恐ろしい会を終えたのであった
本来一泊するはずだったが
まだ不審者が発見できず
過保護の具現化とかしたログナスが提案して
母上とログナスと共に領地に戻ることになった
帰りは母上と別の馬車であったが
ログナスは当たり前のように僕の馬車に乗り
当たり前のように前ではなく隣に座り
会で疲れただろうと労ってくれて
またいつの間にか抱っこされて眠っていた
ついた頃待機して出迎えたユダに見られてしまい
彼の目が笑っていた
辛い
ログナスは泊まってくと言い出し
なぜか同じ部屋で寝ようと提案した
実際は寝ないで僕の身の安全を守ろうとしてくれるみたいだから丁寧に丁寧に断ったが頑固なログナスは認めてくれず
ユダに任せて僕は寝るための支度をした
「坊ちゃん本日はお疲れ様でした」
「本当につかれたよ本当にね」
ベッドに手足を伸ばして転がる
静かにノックをして入ってきたユダに
少し拗ねた口調で返した
「それは大変でしたね。私は悠々と羽を伸ばせました」
「また一人で美味しいもの食べたな!主人を置いてズルくないか!」
「ズルくありませんよ坊ちゃん。私はできる執事ですので今日食べたオーロラフルーツタルトは残してあるので明日のおやつにしましょう」
「やった!」
「それは美味しそうだな。セウスは甘いものが本当に好きだな。きょうの食事会ではあまり食べれなかったから辛かったろう。あんな出来事もあったし、こちらで明日ゆっくり休むといい」
「あんな出来事とはなんでございますか?」
「いやぁ招待客の名簿に名前のない人がいてそれで警戒したんだよ。僕と少し話したんだけど誰も見てなくてってログナスなんで部屋にいるの!?」
「それはユダに相談したら、セウスは俺に気を遣ってしまうから同衾のような行為は困ると教えてもらいならどうすればいい聞いたらこうしたらと」
よく見たらログナスは一式の布団を抱えていた
「えぇ?だから見守られながらは寝られないって」
「なのでそれなら三人で寝ようってことになりました」
となりでいつの間にか静かに並べられた布団がもう一式
ある
「答えになってなくないですか?」
「はぁですからログナス様と私がここで共に居れば敵である間者も手が出せないでしょう。ログナス様お一人でも十分ですが、護衛でもある私が共に居れば寝ていても安心だと思います。屋敷内もより警備を増やし感知器具もさらに増設しましたのでご安心を」
「いや、そうじゃなくてそこまでする必要は」
「はぁ、ですからこのままではログナス様は心配で寝られないそうです。私はいつもおりますのでお気にならないでしょう?恥ずかしがってないで大人しく寝てくださいませ。それともログナス様も私も廊下に追い出して一晩過ごさせますか」
「ぐぬぬぅ」
「すまないが同衾を許してくれないかセウス。ユダの言う通りこのままじゃ安心して寝られなさそうにないんだ。嫌か?」
凛々しい眉を下げ悲しそうな顔をする
卑怯じゃないかそれ
「でも、だって、嫌じゃないけどさぁてか同衾とかハードル上がってない?」
「そうですね坊ちゃん、お布団敷きましたので横になってください今日干したててフカフカですよ」
またいつの間にか三つの布団が並べられていた
昔読んだ極東の国のお話にあった川の字ってやつか
「ささ、どうぞ真ん中へ。坊ちゃんと一緒に寝るのなんて久しぶりですねユダいつもより眠いです」
「どうゆうこと!?」
「Zzz」
「はや!」
「セウス、もう夜更け近い。俺たちがいるから安心して寝てくれ」
「ああもう、わかったよ!おやすみ!」
ボフンと布団に突っ込みくるまる
確かにふかふかだ気持ちがいい
僅かに布団から頭を出し横にいるログナスを見たが
横になって腕を枕にしてこちらを見つめていた
「こ、こっち見ないで」
「ん?それはすまない。でもこうしたほうが安心できる。こんな時に何なんだが、一緒にいれて同じ部屋で寝ることができて嬉しい」
「別に一緒に寝るくらい今までもあったじゃないか。変なこと言ってないで寝てよ」
甘い雰囲気を感じて反対側を向いて言った
「そうだな。でもいつもより一緒にいれて嬉しいんだ。俺をそばに置いてくれてありがとうセウス、おやすみ」
「……こちらが守ってもらってるのわかっているし、贅沢なことは理解してるから。あと、ログナスが守ってくれるのは安心できるから、ありがとうログナス。おやすみ!」
ぎゅっと布団を握りしめて顔を埋める
なんでこんな恥ずかしいことを感じながら寝ようとしなくちゃならないんだ
寝るぞ僕は寝る!
今日寝てばっかだけどふかふかの布団だ
布団の隙間から見えるユダの布団からは、
アイマスクして仰向けで気持ちよく寝ているユダがいる
こいつッ?!護衛が一番に爆睡しとるじゃないかどこから用意したアイマスク!
もういい寝る
いつの間にか意識は混濁し
夢の中へ沈んでいく
不思議と後ろからぽんぽんとされる感触が
とても心地良かったせいだろう…この眠気は
月明かりだけが照らす部屋で
三人は眠った
ベッドサイドにいつの間にか花瓶に生けられた
二輪の白花の優しい甘い香りがより眠りへと誘ったのだ
「おはようございます坊ちゃん。おはよーございます」
ふへぁ
まだ眠いお布団がこんなに気持ちがいいなんて
「ユダ、俺は平気だからまだ寝かせてもいいんじゃないか?」
ん?
「いけませんよ甘やかしては。甘やかしただけ甘えるんですから坊ちゃん。お食事のお時間はありますでしょうか?」
「すまないが頼むよ。セウスも昨日は頑張ったんだ甘やかしたい」
「はぁ。ログナス様も甘いお方だ。ますます甘えん坊になってしまいますよ。責任は取ってくださいませ」
「もちろんさ。俺には素直に甘えてくれないからなセウスの奴」
「国の筆頭騎士様がこんな甘々なお顔をなさっていると知られたら大騒ぎですね。ポーカーフェイスがお得意ですから大丈夫でありましょうが」
「そんなに煽てないでくれ。他では気を引き締めるさ。ユダだってセウスを可愛がっているだろ?たまには譲ってくれ」
「こんなんでも我がご主人様ですからね。私は私のすべき事を成すだけです。いい加減起こしてくださいませんか」
「ああわかったよ。ユダがそばにいてくれて良かった。これからもセウスのことをよろしく頼む」
「頼まれなくともお側を離れるつもりはございませんよ。ログナス様も公私共に坊ちゃんをよろしくお願い致します」
近くに気配を感じる
「狸寝入りしてないで起きてくださいませんか」
「ぐ、ぐぅ」
「随分寝汚い狸でございますね。いつまでも抱きついていてはログナスが起きられないでしょう」
んなッ!?
ガバッと勢いよく布団から顔を出す
目の前に爽やかな笑顔を前面にだしたログナスがいた
僕は寝ている時にログナスに抱きついていたようだ
「ご、ごめんログナス!!今退けるから」
そう言ったのにぎゅっと抱きしめられる
「おはようセウス。よく寝れたみたいだな」
こんなイチャイチャ求めていない!
同じ布団の中に居たようだなぜに僕は!
「お二人とも布団を片付けますので退けてください。そのままそこにおりたいならお食事は下げますので悪しからず」
「た、食べるから」
ログナスの胸を押し布団から這い出す
後ろでクスクスとログナスが笑っている
子供扱いしやがってこのイケメンが
そこから若干機嫌が悪いユダに着替えさせられ
庭で朝食を取ることになった
「本日はグリーンアスパラのムースとベーコンと卵のガレットとオレンジソースのサラダ、デザートはピスタチオのアイスでございます」
ユダがそつなく食事を揃える
「さぁ頂こうかセウス。いつ来ても美味しそうな食事だ」
「お褒めいただき恐縮でございます」
「ユダの作る食事はいつも最高なんだ!デザートも美味しいしな」
「朝からそんなに食欲がおありでしたら大丈夫ですね」
「モグモグッ、食事は美味しく食べたいに決まってるじゃないか。おいしいのが悪い」
卵に絡めたムースとハムとガレット生地をナイフで切り分け口にする
美味しい!
「普段騎士宿舎でたまに料理をするが、やはりユダみたいにうまくできないな。とても美味しい」
「ログナス様はまだ宿舎にお住みに?貴方様なら城に邸宅がございますでしょうに。お食事も宿舎の食堂か専属の料理人にお任せすれば良いのに。ご立派ですね」
「確かにあるが、やはり任務や仕事をするのに宿舎にいたほうが情報が早く仕事がしやすいんだ。立派でもないさ食事ぐらい気兼ねなく摂りたいし、いつかセウスに美味しいものを作って食べてもらいたいんだ」
初耳だ!
なんでもできて忙しいくせに
さらに料理男子になろうとは
恐ろしい男
「愛されてますねぇ坊ちゃん。今度レシピをお教えしますのでよろしければどうぞ」
「それはありがたい!ユダ直伝のレシピならセウスもイチコロだな!」
「勝手に盛り上がらないでよそっちの二人」
「いえいえ、向上心ある若者は素晴らしいですね。うちの坊ちゃんと違って」
「僕だってあるさ!料理はできないけど、やらなきゃいけないことがあるから」
「?どんなことですか坊ちゃん」
「………内緒!」
ちょうどいい温度の紅茶を飲む
失敗はもう二度とごめんだ
守るために必ず果たすんだ
こんな穏やかな日々を
日常を守りたいんだ僕は
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