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みどりの部屋
「ぼくはね、注射泣かないんだよ!」
部屋の中から声が聞こえてくる
男の子が丸椅子に乗ってくるくる回りながら、自慢げに腕まくりをする
森宮「ゆいとくん、すごいな。自分から腕見せてくれるの⁈さすがお兄さん!」
気が変わらないうちに差し出された腕にゴムを結び、血管を探す
「昨日はご飯全部食べた!魚ね、好きじゃないけど食べたの!」
森宮「へぇー!どんどん大きくなれるね、すごいなぁ!力持ちのお兄さんにもなれるね!」
差し出している腕の血管に定めて消毒をしながら話し続ける
森宮「ゆいとくん、ここにするから10秒動かないで座ってられる?」
「うーん、なんかやっぱり手痛くなってきたかも」
いざ始まるとなると怖くなってきたのか、声も小さく目線も下がってしまう
差し出していない方の手で消毒した部分を触りだして、森宮に見えないようにしていた。
看護師「ゆいとくん、こっちの手つないでよっか!強いお兄さんだから10秒頑張ってみない?」
「‥10秒したら終わる?」
森宮「じっと10秒できたら終わりだよ、できそうかな?」
「できるかもしれない‥」
看護師が差し出した手を取って、右手は手を繋いで左手は自分の意思で森宮に差し出す。
森宮「じゃあね、壁にあるキリンの身体に模様がなん個あるか数えて先生に教えてくれる?」
話しながら再度消毒したあと針を刺す。
痛みがほぼ無かったのか男の子は夢中で数を数える
「先生!12個あったよ!」
森宮の方に振り返りながら数を教えてくれた頃には針は抜かれて、止血で押さえているところだった。
森宮「ゆいとくんさすがお兄さんだね、もう終わっちゃったよ!先生もすごくやりやすかった、ありがとう。」
男の子はニコニコ嬉しそうに看護師に手を引かれ、診察室を出て行った。
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