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第49話 蓮side油断

選択授業で顔見知りの男子学生、桐生はグループワークの仲間の一人だった。取り立てて目立つやつでもなく、優しげなその男は女子といる事が多くて、あれが今流行りの中性男子かと、そんな印象だった。 提出期限の迫ったグループワークのまとめに、俺と桐生が割り当てられたのは偶然だったが、今考えれば偶然ではなかったのかもしれない。 「虻川、最終まとめ何処でやる?俺の家、彼女と一緒に住んでるから、ちょっと男入れるのは無理でさ。」 そう言って頭を掻く桐生に、俺は多分大いに油断したんだと思う。俺は気軽な気持ちで言った。 「そうだな、じゃあ、うちでやるか。1時間もあれば出来るだろ。」 それから俺はマンションに桐生を招き入れた。俺が机でパソコンを立ち上げている間に、桐生はコンビニで買って来たアイスコーヒーを袋から出して、画面を見ていた俺に渡して来た。 俺たちはアイスコーヒーを飲みながら、まとめの作業をしていたが、俺は急にクラクラと頭がふらついて来た。俺は座って居られなくなって、思わず桐生を見た。 すると桐生は、見た事がない表情で俺をうっそりと見て笑った。 「俺さ、虻川が凄いタイプなんだ。でもβの俺じゃあ相手にしてもらえないだろ?あいつ、お高い三好と付き合ってるのは知ってたけど、別に操立ててるわけじゃないだろ?ちょっとだけ、楽しもうよ。」 そう言うと、俺を見かけに似ない力でグイッと引き立てると、寝室へと引来たてて行った。 「結構その薬、足腰に来るんだよね。でも感覚は正常だから、楽しむことは出来るんだ。良い薬だよね。ふふふ。」 そう言って抵抗する力の抜けた俺をベッドへ転がした。その時玄関チャイムが鳴った。けれど桐生は気にも留めずに俺に覆いかぶさってキスした。 俺は抵抗しようとしたけれど、手も足も鉛の様に重くて、懸命に歯を食いしばるしかなかった。 肩をすくめた桐生が俺の服を捲り上げたその時、涼介が寝室の入り口に立っていた。俺は涼介に助けを求めたくて、全然この状況がどう見えるかなんて、直ぐには気がつけなかった。 「…涼介。助けて…。」 俺のささやきが聞こえたかどうか、強張った顔をしながら、涼介は桐生の肩を掴んで引き剥がした。 「…誰だ、お前!」 慌てて振り返った桐生は、それでも俺と涼介を見ると、肩をすくめて言った。 「え?俺たちこれから良いことするんだから、邪魔するなよ。な?虻川。」

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