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side. Subaru
俺には価値も何も、存在しないと思っていた。
周囲の人間から与えられるモノは、
常に苦痛ばかりで。
それなら何の為に生きているのかと問われた所で、まともに答える気すら湧かないような…。
そんな無気力な人生しか、歩んで来なかったから。
だったら死ねばいいとか、
簡単に思うヤツもいるのかもしれないけど。
生きる理由が無いって事は、
死ぬ理由もみつからないわけで…。
せめてその答えが決まるまででもと。
のらりくらり、たまたま生きる方の道を。
何とはなしに、選んでしまってるだけなんだろう。
小野寺 昴 、15歳。
たかが高校生のガキだってのに。
親も先公も“俺達”を化物でも見るような…酷く冷めた目で盗み見ては、存在自体を消したがる。
特に親。
テレビか何かで、全ての親が平等に子を愛しているんだ────…とかほざくバカな大人もいたが。
そんな理想論なんか、在るはずも無くて。
俺も“晃亮 ”も、物心つく前からずっと。
ゴミクズみたいに扱われてきたんだ。
誰からも必要とされなかった俺達。
だから俺は″晃亮″を必要とし、晃亮も俺だけを信頼してくれている。
例えそれがどんなに歪んだ関係だとしても。
偽りだらけのクソな大人に縛られるよりかは、遥かにマシで。
唯一の、救い…だったんだ。
『すばる。』
『…晃亮。』
俺の名を呼ぶその人こそが、唯一家族と呼べる人、千葉 晃亮 。
常識は要らない。
形だけの繋がりなんざクソ喰らえだ。
自ら外道に堕ちるは、此処に常識 が無いから。
敵と見なせば叩き潰し、一心不乱に血を流す。
答えは無い。
考える暇も必要も無く。ただ、喰らう。
此処を統べる最強の男───…千葉 晃亮を狩るために。
今日も似た者同士の野良犬共が、群れを率いてやって来るから───…
「行くぞ。」
「…はい。」
俺は晃亮の拳として、生きる理由を獲た。
日の当たる場所なんて必要ない。
闇に生きる道を、自ら受け入れたんだから。
多勢に無勢、そんなの上等だろ?
昔、弱くて無力だったあの頃の俺とは違うんだ。
そして晃亮は俺なんかじゃあ、足下にも及ばない…更に雲の上を行く孤高の王。
彼に救われた俺は、ずっとずっと小さい頃に誓ったんだ。
これは生まれた時から定められた、運命なのだから。
俺に選択肢など─────…無い。
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