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side. Subaru
「え…────円、サン…?」
またいつもの悪夢が始まり。
一枚壁の向こう、自室で耳を塞ぎ現実逃避していたら…
程なくして、円サンの悲鳴がピタリと止み。
隣りの部屋から、誰かが外へと出て行った音を最後に。
そこは不自然なくらい、静まり返ってしまった。
不審に思い、暫くベッドの上で様子を窺っていたら。
遠慮がちにドアがノックされ────…
気まずそうに俯いたままの円サンが、ゆっくりと扉越しに顔を覗かせた。
中に入るよう促し、ふたり並んでベッドへと腰を下ろす。
円サンから香る微かな晃亮の匂いが、
今し方の生々しい映像を嫌でも過ぎらせ。
俺は堪らず、奥歯を噛み締めた。
「何か、あったんですか…?」
晃亮が円サンを呼び出し、事に及んでからまだ30分くらいだろうか?
いつもなら何度も何度も、円サンが気を失うまで狂ったよう繰り返していたコトなのに…。
今日の晃亮の行動は、まさに異常だった。
「ううん…何も、何もなかったんだ…」
力無く首を振る円サンは、
何処を見るでもなく虚ろな瞳をしていて。
晃亮に散々弄ばれ…
身も心も、相当病んでいるような面持ちを浮かべる。
「聴こえてた、よね…?いっ…いつもみたく、されてたん、だけどっ…。いきなり帰れって、そしたら晃亮クン、出て行っちゃって…」
話しながら、円サンは涙を流す。
晃亮の行動に振り回され混乱し、
気持ちが追いついていないのかもしれない。
「ごめん、円サン…」
震える身体を抱き締める。
少しでも円サンの苦痛が和らげばと、強く強く。
そうすれば円サンは自ら腕を回してきて。
俺の胸の中へ、深く顔を埋めてきた。
「こ…すけクンも、傷付いてるって、解ってるっ…。でも、いくらオレでも…こんなの、こんなの────」
悲しすぎるよ…
年上という立場も忘れ、俺に縋りつく円サンは…
″あの日″みた笑顔も輝きも、
今は全てを失くしてしまっていた。
もう、限界なんだ…。
「円、サン…」
「ふぇっ…?」
両肩に手を添え、瞳を合わす。
ボロボロと涙に濡れ、
揺れる瞳が俺を捕らえ伏せられたなら…
俺は迷うことなくソレに近付いて、唇を塞いだ。
「んっ、ふぁ…ん…」
深く深く、アナタのもとへ。
ただ夢中で互いに舌を絡め、繋がる。
隠しきれない想いが、
そこから伝わってしまいそうなくらいに。
今だけは欲張りになって、円サンの唇へとかじりついた。
「んあッ…はぁ、ンッ……」
頬を赤らめ、鼻から甘い吐息を漏らす円サンは…
今までにないくらい艶やかな表情で以て。
俺の心を魅了していった。
「はッ…円、サン…?」
「アッ…昴くっ……」
俺から離れたら、名残惜しそうにしながら俯く円サン。
「円サン…?」
「やっ、その…これは────…」
顔を覗き込むと、もぞもぞと慌てて俺の腕から逃れ、
背を向けられてしまった。
ドキドキ、する。
そこから浮上する期待を胸に。
俺はその背をふわりと包み込むと、耳元に顔を近付け、囁いた。
「こっち、向いて下さい…」
「むっ、ムリ…っ…」
「ね…?」
ちょっとだけ、悪戯心が芽生えて。
ほんのり赤い耳朶に、ふぅっと息を吹きかけたら。
「んやぁッ…!」
円サンは女の子みたいに上擦った声を漏らし。
首筋まで真っ赤に染め、気まずそうに口を抑えた。
「円サン、お願い…」
「うぅ…」
甘えるように懇願すれば、円サンの方が根負けしてくれて。怖ず怖ずとこちらを向いたアナタの頬に、するりと手を添える。
「もう一度、キス…してもいいですか?」
そう熱っぽく見つめ、問いかけたなら。
円サンは期待する以上に意外な応えを…
俺へと示すのだった。
「…キス、だけ……?」
「ッ…─────!」
もう隠しきれない。全部、溢れてく…
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