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それは幻想的な魔法みたいで 4
「これだと動けないし、見えないんですが……」
「まぁ、そうだよな。寒い中くっつくのって何かそれっぽいだろ?」
「それっぽいって何ですか、それっぽいって」
「ほら、何か恋人同士っぽいだろ?」
俺の単語にレイヴンの身体が強ばる。
もそもそと俺を見上げて来る顔は寒さのせいだけではなく、赤い気がする。
「また、人のことからかって。いつも戯れに抱きしめるじゃないですか」
「それは、抱き心地がいいし?」
「抱き心地って……」
「最近はレイちゃんしか抱きしめてねぇけどなァ?」
ニッと笑って見下ろすと、レイヴンが困ったように視線を逸らした。
「そ、そうですか……」
「なぁ、折角綺麗な景色なんだしよ、もうちょい愉しもうぜ?」
「……何か、嫌な予感が……」
「いくら俺でもココじゃ寒くてしな……」
「それ以上言わないでいいですっ! 分かったから!」
俺から離れようとするレイヴンを腕の力を緩めて少しだけ開放する。
革手袋のまま、試しに頬に触れてみると冷たそうに顔を顰める。
「やっぱ手で直接触れた方が好みか?」
「好みというか、なんというか……触れる事前提で言われても困りますけど、何か変な感じはします。って、別にわざわざ左手だけ外さなくても……」
「まぁ、手のほうが感覚がそのまま伝わるから、冷たくても柔らかい頬が分かるからな」
「分かりましたけど、そんなに撫でられましても……」
擽ると一応逃げはしないので、雰囲気を重視してなるべく紳士的に微笑みかけてみる。
「なぁ、このままキスしていいか?」
「……え、あ……」
雰囲気に飲まれているレイヴンが返答に困って視線を彷徨わせた。
そんなに顔違うか? 何か優しさ重視すると、レイヴンがいつもやたらと大人しくなるのは気のせいじゃなさそうだが。
まぁ、こういう景色の時は大げさに優しくしてもいいかもしれねぇな。
じゃあ、ココは寂しそうな顔でもしてみるか。
で、なるべく、甘い感じで。
「ダメか?」
「う……こ、こういう時だけ、そういう感じなの、ズルい、し。何か、断りにくい……」
「なら、いいか?」
「…………」
顔を赤くしたレイヴンは返事の代わりに観念したのか、目を閉じた。
少し上向きにさせて、そっと顔を寄せる。
相変わらず、まつげ長いよなぁ。
少し見つめてから、ゆっくりと優しく唇を合わせた。
「ん……」
「今日のレイも、凄く可愛い」
「……っ」
俺の言葉に驚いて目を開くが、至近距離なことに照れて、寒さと共に耳まで赤くする。
「だから、男に可愛いって言っても……」
「そうだな……雪景色と、レイの髪、白と黒が幻想的で綺麗だ。これが魔法じゃなくて現実だっていうのが、な」
「変なモノ、食べました……?」
「まぁ、貴族の嗜みだな。って言っても、そんなに大したこと言ってないが」
フッ、と笑うと、レイヴンが嗜み……と、反芻する。
「魔法使いの魔法でも、ここまで美しい景色と溶け込むのは難しいってことだ。ってなれば、必然的にレイが魅力的ってことになるだろ?」
「ホント、そんなに褒め称えられても……どう反応したらいいのか分かんないんですけど……」
「俺が普通なことを言うと否定するが、見目麗しいって言われてるじゃねぇか」
「それは、その……優しい皆さんが俺の良さそうなところはそこかなと言ってくれてるというかなんというか……」
唇を触れるか触れないかの位置まで近づけると、レイヴンが反射的に目を瞑る。
「いいじゃねぇか。ホントのことなんだし。俺に絵心があったら風景と一緒に描きたいところだが、記録用魔道具で記録してみるのも……」
「わ、分かったから。何か凄く恥ずかしいので……俺も優しいテオが……」
そっと目を開こうとしたので、笑んでまたキスをした。
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