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第24話「正義とは?」

「ん……っ、ヴィル……」  神父様はオレに愛撫されながら、赤くなった瞳をこちらに向ける。 「私は、悪魔か」  ……どうやら、酔ってても少しは聞こえてたみたいだ。だったら、それなりに傷ついたよな。酔ってるなりに、我慢してたのかな。 「神父様は、神父様っす、よ!」 「あぁっ!」  すぐに忘れられるよう、前に触れながら挿入する。  グリグリと先っぽを弄りながら、火照った内側を貫く。 「あっ、あぁっ、こ、えが……っ、こえが、する……っ」  それなりに「当てられて」はいたらしく、神父様は顔を覆って苦しむ。前に刺されたのが、案外尾を引いているらしい。 「大丈夫っす。……オレは、そばにいます」 「……っ、ヴィル……っ」 「へへ……今日は名前、めちゃくちゃ呼んでくれますね。嬉しいっす」  うねるナカを深く抉り、口付ける。  神父様は気持ち良さそうに腰を揺らしつつ、オレに縋り付いて震えた。 「……ッ、あ……そ、そこに……いる……! 奴らは……私を……私を、犯し、嬲って……笑うのだ……!」  一緒に逃げ始めた頃も、よくそんなことを言っていた。死にかけた日の記憶は、神父様の中で深い傷になっている。それでも神父様は、いつだって平気なフリをして、何でもないように振る舞う。虚勢を張って、あらゆる感情を押さえ込んで、痛みを噛み殺すんだ。 「大丈夫っすよ。誰もいないんで」  優しく抱き返し、傷痕を撫でた。  唇で乳首を()みながら、深い場所に丁寧に、丁寧に擦り付ける。 「あっ! は……、んんっ! ヴィル……ヴィル……っ!」 「ここにはオレらしかいません。……だから良いんすよ。弱いトコ、全部見せて……」  ずちゅ、ずちゅといやらしい音を立て、ゆっくりと、味わうようにナカを堪能する。  繋がった部分がきつく締まって、精がこみ上げてくるのを感じた。 「……っ」 「あ……ッ」  ずるりと竿を引き抜き、顔の前に持っていく。 「飲むっしょ?」  神父様は待ち構えていたかのようにしゃぶりつき、溢れる精も残さず吸い尽くした。 「……っ、う、ぐ……ぅうううっ」 「……神父様?」  どうも、様子がおかしい。  そういえば、撫でた時の反応も、参ってた時と似ていたような……? 「……気に、するな」  はぁ、はぁと息を荒らげ、神父様はオレの腹の上に|跨《またが》る。 「抱け」  まだそそり勃ったままのオレを自ら後ろで咥え込み、自分から奥へと挿れていく。 「……まさか……」  呪い、まだ効いてるんじゃ?  そう聞く前に、神父様は奥深くまでオレを咥え込み、腰を揺らした。自ら感じる場所に押し当て、熱っぽい吐息を漏らす。 「……は……ぁ……ッ、このまま……このまま、続けろ……っ」 「で、でも」 「いい。……おまえの手で私を壊せ。く、ぁ……っ、快楽で……っ、ンッ、狂わせろ……!」  縋るような瞳が不安定に揺れる。  マルティン達がオットーを倒せば、「呪い」は強まる。神父様は迫り来る「悪意」を快楽で塗り潰し、どうにか耐えようとしているんだ。 「……っ、たく……無理すんなっつったのに!」 「あぁあぁあっ!?」  負けじと下から突き上げ、綺麗な身体をガクガクと揺らす。 「わかったよ……っ! アンタが……っ、悪意に潰される、はぁ……っ、前、に……ぃッ! オレがっ! 快楽でっ! ぶっ壊す……ッ!!」 「はぁっ、アッ、ぁ、う……ッ! んぁああっ!」  背を仰け反らせ、神父様は縋るようにオレの手に触れる。オレはその手に指を絡め、胴体を起こす。抱き締めるようにして、弱い箇所を責め立てた。 「ンッ!? あっ、~~~~ッ! も、イ……ッ、あぁあっ!!」 「溺れてください……ッ、気持ちいいことだけ、考えて……」  耳元で囁き、容赦なく突き上げる。  神父様は全身を大きく震わせ、オレの背中に軽く爪を立てた。 「ぁあっ、いッ、~~~~~~ッ!!」  それでも容赦せず突き上げ、勃ったままのソレを握る。  神父様は声にすらならない声を上げ、透明な液体をその先端から噴き出した。 「──────ッ!?」 「は……ッ、潮、出てるじゃないすか……エロ……」  力の抜けた身体を抱き締め、頬擦りする。  神父様は安堵するように目を細め、続きをねだるように腕をオレの首に絡めた。    ***    神父様は一度トんだら落ち着いたらしい。 「……呪いがまだ効いてるって、なんで言わなかったんすか」  ベッドに転がったまま押し倒すようにし、問い詰める。  神父様は気まずそうに目を逸らしつつ、小さな声で語り始めた。オレの腕を振り払わないあたり、逃げるつもりはないらしい。 「暴走のことを、隠さねばならなかったからな」 「それでも、オレには言ってくださいよ」 「言えば、貴様はオットーを倒すより先に私の解呪を優先させただろう。それでは、余計な犠牲が増えかねない。『異形』を狩る専門職と連携できたのだ。封印を解いたオットーが猛威を振るうより前に、なるべく速く対処せねばなるまい」 「……ッ」  確かに、神父様の言う通りだ。  神父様の心に負荷がかかるってわかってたら、囮作戦にはそりゃ反対したし、オットーの倒し方ももっと考えるように言ったと思う。 「……一瞬、オットーと意識が繋がった。倒されたことは間違いないだろう」 「そりゃ、良かったっすけど……大丈夫だったんすか」 「修道士テオドーロの解釈には、少しばかり語弊があったようだ。……オットー・シュナイダーは、あくまで『正義の男』であったらしい」  神父様は複雑そうに眉をひそめ、淡々と語る。 「『善き人々が涙を流し続ける限り、何度でも蘇り、悪を駆逐(くちく)する。たとえ自分が朽ちても、志を引き継ぐものは何人もいる。この世に残るべきは善性のみだ』。……そう、恨み節を遺して逝った。私を攻撃しなかったのは、悪意よりも志が勝ったがゆえだろう」  なるほどな。神父様に精神攻撃を加えることよりも、メッセージを伝えることを優先した、と。 「……正義、ねぇ。確かに、『一般市民』にとっては正義だったのかもっすけど……」  神父様は顔を曇らせ、静かに首を振った。 「悪とは、なんだ。その判断基準はどこにある」  苦しそうに呻き、神父様はオレの目を見つめる。  変態野郎が言ってた。オットーは次第に「些細な不道徳行為」でも標的にした……って。  ってことは、少なくともオットーの判断基準では、ヤツが「悪だと思えば悪」だったってこと……なんだろうな。 「駆逐されるべき悪とはなんだ。善き人々とはなんだ。喜んで祖父に石を投げ、その死を(わら)った者たちが『守られるべき善』なのか……?」  神父様は唇を噛み締め、肩を震わせる。 「……あー……たぶん、考えない方がいいっす。ほら、大抵の人間って自分勝手なもんじゃないすか……」  震える身体を抱き寄せ、背中を撫でる。  歴史とか、思想とか、そういうややこしいことはオレにはよくわからない。……だけど、神父様はそういうの、考えちゃう方っぽい。別に、気にしなくていいのに……。 「誰がなんと言おうと、オレは神父様の味方です」 「……貴様は、強いな」 「単純なだけっすよ」  神父様の髪を撫で、額にキスをする。  神父様が背負っているものは、きっと、オレの想像以上に重たい。代わりに背負うことが無理でも、せめて軽くしてやらなきゃな。……いつか、ほんとに潰れちまうよ。 「単純、か……。そうだな。だからこそ、心強いのだ」  えっ、直球で褒めてくれた!?  どうしたんだよ神父様!? 「……えっと……大丈夫っすか? ほんとは精神攻撃めちゃくちゃ効いてるんじゃないすか?」 「……愚か者」 「えっなんで怒るんすか」 「うるさい。着替えるぞ」  神父様はオレの腕を振りほどき、さっさとベッドから抜け出す。ううー……わかんねぇ。何に怒ったんだ……? 「オレなんか悪いこと言いました!? だったら謝りますからぁ~~」 「いいから着替えろ。そろそろ二人が帰って来る。……二人とも裸でいれば、禁忌を犯しているとバレてしまう」  あっ、これ、まだバレてないと思ってる。変態野郎に混ぜてって言われたことは覚えてなさげか……?  つっても、話聞く限り、マルティン達もセックスしてるっぽいんだけどな…… 「神父様って、ヘンに真面目っすよね」 「……?」 「あ、いや、なんでもないっす」  気付いてないんならいいや。そっとしとこ。  ……さて、マルティン達が帰って来たら、今後について交渉しねぇとな。  敵は、少ないに越したことねぇんだから。

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