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世界が無くなったら
「ねぇ相馬さん。もし明日、世界が滅びるとしたらどうしたい?」
一通りの情事を終えて
男二人、裸で抱き合う。
傍から見たら何て思われるか知らないけど
これがオレの普通、常識。
彼の体温は程よく暖かくて心地よい。
このままずっといたいとさえ思う。
「陸はどうするんだよ?」
「そーだなー、相馬さんと交わりながら世界が終わってくれたら満足かな?」
この変態なんて相馬さんは照れて
オレの胸に顔を押しつける。
耳まで真っ赤だよ。
「相馬さんこそ……どうするのさ?」
顔を挙げさせ額にキスをすると
少し躊躇った表情を見せたがすぐに口が開いた。
「こうやって……陸の体温を感じながら死にたい」
そう言って彼は身を捩って
オレから離れようとする……離す気はないよ。
いくら抵抗しても
なかなか離してくれないオレに諦めたのか
今度は素直に背中へ腕をまわした。
「今……地球滅びてくれないかな。そうしたらさ、このまま二人で溶け合うように散っていける」
「怖い事言うなよ……!俺はまだこの世界で陸を知りたい」
それだけ言うと相馬さんの瞳からは
とめどなく涙が溢れる。
「ごめんね……相馬さん」
瞼に口付けて涙を舌ですくう。
「やっぱ、この質問は愚問だったね……ごめん」
未来の事じゃなくてオレ達は今を感じていたい。
その一心でここまで駆け抜けてきたのに
この質問はあまりにも悪すぎた。
ごめんともう一回謝って頭を撫でてやると
安心したのか眠ってしまった。
寝ているというのに
相馬さんの手は痛いぐらい腕を握っている。
「相馬さん……オレは例え世界が終わっても、けして離れはしない」
その誓いは暗い部屋に谺して……消えた。
(来世もきっと一緒だって信じてる)
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