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第6話
(この子供は、敏いな)
自分がどんな立場であるのかを理解している。かといって流されるままの人形ではないという彼なりの、精一杯の抵抗がこの無表情なのだろう。だが、弥生からすればやはりまだ子供とでも言おうか。彼は〝可愛がられない〟為に無表情を貫いているのだろうが、この美貌では逆効果だ。この僅かも動かない美しい顔を色で歪めてやりたいという欲を持つ大人は、残念ながら履いて捨てるほどいる。松中などは十中八九この手の性格だ。おそらくはすでに身をもって思い知らされたであろうに、それでも止められないのは幼さゆえか、矜持が高すぎるのか。
(なんにせよ、勿体ないことには変わりないか)
愚鈍ではないであろうに、それが足枷になるばかりの環境に身を置いていることも、これほど美しいというのに、真実心から愛されることを知らないことも。
「なるほど。松中殿が穀潰しと思われるのなら、この者は私が引き取りましょう」
興味を示しているとは思っていたが引き取るとまで言われると予想もしていなかった松中はギョッとして、女にもたれかかっていた姿勢を慌てて直した。
「そ、そんなことは……。何も春風殿のご子息の手をこんな男の為に煩わせるのも……」
「煩わしいと思うならば最初からこのようなことは口にしない。私は言葉に責任を持つからな。それに、松中どのはこの者の事を穀潰しと思っておられたのだろう? 役に立たぬ男と言っておられたのだから、丁度よい機会ではないか。そんな役に立たぬ男など、私に押し付けてしまえば良い。私はこの者を河川敷に捨てたりなどせぬゆえ、野垂れ死ぬ心配もないのだから良心も痛まぬだろう」
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