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第9話
宴に参加したと思ったら見知らぬ少年を連れ帰ってきた弥生に、出迎えに出ていた優と護衛をしている紫呉は目を丸くして驚いていたが、今はそんなことに構っている暇はない。説明を求めてくる二人に後で説明するとだけ告げて、弥生はゆきやの手を引いて湯殿へと向かった。自分でできるかと問えばコクンと頷きが返されたので、ゆきやをその場に置いて何かゆきやの身丈に合った着物が無いかと探す。そして奥の方から小さくなって仕舞ったままになっていた着物を取り出し、湯殿へと戻った。着物は後日揃えてやるとして、今はこれで我慢してもらおう。
ゆきやに声をかければ、身を綺麗にしたゆきやが全裸で出てくる。慌てて弥生が着物を着せてやれば、ゆきやは驚いたように瞳を瞬かせながらも、どこかホッとしたように小さく息をついたのを見て、彼が全裸で出てきた意味を知り弥生は居たたまれなくなった。だがそれを顔にだしては、ゆきやも委縮してしまうだろう。なんでもない風を装って、しっかりと着物を着せたゆきやの手を引いて自室へ戻る。敷物の上に座らせて、弥生は彼の正面に自らも腰を下ろした。
「先程松中殿と交わした話は聞いていたな?」
聞けばコクリと頷きが返ってくる。そして躊躇いもなくその唇は紡ぐのだ。
「これからは春風様にご奉仕せよということでしょうか」
ならば、と無表情に淡々と着物の合わせを寛げようとするその細い手を、弥生は己の手を重ねて優しく止めた。
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