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第44話

「はい、おかげ様で。相も変わらずでございますが」  何も変わらないと言えば、静宮はますます楽しそうにコロコロと笑う。 「変わりないようで何よりじゃ。いかにおたぁさんや女官たちが共に居るとはいえ、頼る者もおらぬ東夷など恐ろしゅうてなりませんでしたが、迎えの者の中に春風さんを見つけた時はほんに安堵しました。それに、上さんも恐ろしい方ではなく、今ほんに私は安堵しているのですよ」  京の者達がこの江戸に住まう者をどう言っているかなど簡単に想像できる弥生は小さく苦笑した。おおかた静宮は徳茂のことを鬼だの血も涙もないだのと聞いていたのだろう。 「ご心配あそばされますな。宮様がご覧になられた通り、上様は非常にお優しいお方。きっと宮様を大切にしてくださいますよ」  そうでございましょう、と徳茂に視線を向ければ、彼はどこか照れたようにはにかみ、そっと弥生から視線を逸らした。そしてわざとらしく咳払いなどしている。その様子に弥生はもちろん、静宮も楽しそうにコロコロと笑った。

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