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第46話

 あの子は存外面倒くさがり屋なのか、放っておくとすぐに食事をおろそかにするからと、馬にいっぱいの食事と菓子を括りつけて跨り、優や紫呉と共に紫蘭の咲く庵に行けば、馬の嘶きに表へ出てきた雪也が駆け寄ってきた。 「弥生兄さま!」  嬉しそうに笑みを浮かべて馬から降りた弥生に飛び込むようにして雪也が抱き着く。そんな幼子のような姿に三人は柔らかな笑みを浮かべ、弥生はそっと雪也の美しい髪を撫でた。 「久しぶりだな雪也。元気にしていたか?」  顔を見せて、と頬を撫でれば、嬉しさに少し頬を紅潮させた雪也が顔を上げて真っ直ぐに弥生を見つめる。 「はい。弥生兄さまはもうお忙しいのは終わられたのですか?」  今日はゆっくりしていけるのかと問いかける雪也にひとつ頷けば、ぱぁっと花が咲いたように微笑んだ。そんな雪也に弥生は思わず優し気な眼差しを向けて笑みを深める。随分と、嬉しそうに笑うようになった。 「さぁ、中へ入ろう。雪也のことだ、どうせ碌に食べておらぬのだろう。今日は久しぶりに私が作ってやる」  たくさん持ってきたと馬を振り返る弥生の視線を追うように雪也もそちらに顔を向ける。嬉々として馬から荷物を下ろす紫呉に、雪也は目をまん丸にさせた。

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