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第243話

 紫呉が庵にいた三日間は賑やかで、特に由弦や湊は少しの時間も惜しいとばかりに紫呉から槍を教えてもらっていた。着物の色が濃くなってしまうほど汗だくになりながら練習用の槍を振るう由弦と湊の姿に、体格こそ己とあまり変わりはないが、筋はうんと二人の方があるのだろうと雪也は微笑ましく見ていた。  周は勿論であるが、由弦も湊もまだまだ成長期で、紫呉に触発されたのか最近はよく食べる。食事を主に用意している周がビックリするほどであったが、良く食べるのは良い事だと雪也は微笑んでおり、蒼も商品にならない野菜などを持ってきてくれたので、さしたる問題は無い。人が多ければ、それに合わせて騒がしくもなる。だからだろう、約束の三日が過ぎて紫呉が弥生の元へ帰って行った後の食卓は、随分静かだと皆が感じていた。 「早くまた紫呉こねぇかなぁ」  迷惑になるとわかっているから表にこそあまり出してはいなかったが、内心では一番紫呉の出立を嫌がっていた由弦は、いつもの勢いもなく茶碗を持ったままポツリと呟いた。  寂しい、と全身で訴える由弦の姿に、遊びに来ていた蒼がクスリと笑う。

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