「あとは華都の――いや、帝の動きを待つより他ないだろうな。今回はどうあっても、上様は動かれないだろう」 　衛府を、ひいては茂秋を下に見て、散々に無言の屈辱を味合わせた華都側は、結局会合のすべてで華都どころか各領よりも衛府に不利益な事ばかりを並べ立てた。まるで衛府は各領よりも下位であると言わんばかりに。そして尊皇を公言してはばからない芳次を重用し、言葉の端々で茂秋よりも芳次の方が将軍にふさわしかったとあからさまに匂わせた。将軍が従える各領主の前で行われたその数々に屈辱を感じないわけがない。まして茂秋が芳次と将軍位を争ったのは、そう昔のことではない。 　じわりじわりと、まるで真綿で首を絞めるようなそれらは華都の得意分野だ。彼らは武器を持たず、蝙蝠の裏で物事を思うままに運ぶのだ。結果、それは成った。茂秋は帝も摂家もいる中で芳次を叱責し、会合から追い出すどころか城へ先に戻るよう命じた。茂秋としては各領主を束ねる衛府の将軍であり、政を行っているのは己であって芳次ではないと華都側に印象付けたかったようだが、これは悪手だ。弥生は茂秋に付き従い会合を終えてからその場を去ったが、茂秋の行動に多くの者達が失望し、あるいは大いに喜んだであろうことは想像に難くない。