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第326話
作った薬を薬包紙で包みながら、布団で眠る男をチラチラと見ていた雪也は、さてどうしようかと胸の内で小さく息をつく。
薬を作り終えたのだから患者に渡しに行きたいのだが、刀を佩いていた男がいつ目を覚ますかわからない以上、由弦や周を庵に残して出るのは不安が残る。とはいえ、これは食事の買い出しではないのだから周にお願いするわけにもいかず、今はどうにか庵に居たとしても、いつかは薬を渡しに行かなければならない。こういう時に大人が雪也しかいない状況は問題が出てくるな、と眉根を寄せた時、カタンと音がして庵の扉が開いた。
「雪ちゃ~ん、お邪魔するよ~」
柔らかな声音で声がかけられ、雪也は勢いよく顔を上げる。そこには様々な野菜の入った籠を背負った蒼と湊がいて、雪也と視線が合うとニコリと微笑み、手を振った。
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