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第328話

「ありがとう。じゃぁ、申し訳ないけどお願いします。周、すぐ帰ってくるからあとお願いして良い?」  その言葉に無言で成り行きを見守っていた周がコクンと頷いたのを見て、雪也は周の髪を撫でると、蒼と湊にペコリと頭を下げて足早に庵を出た。その後ろ姿に湊がクスリと笑う。 「ほーんと心配性なんだよなぁ。ま、それは雪也だけじゃないけど」  ジッと扉の方を見つめ続けている周の揺れる瞳を見て、湊は苦笑する。本当は雪也よりも周の方が心配症なのかもしれない。 (ま、心配の方向が二人とも違うけど)  それは雪也が周の事を子供だ子供だと思っているからなのかもしれない。だが、そのあたりに首を突っ込む気もなく、湊は背負っていた籠を下ろして食事作りを手伝うために周の元へ向かった。

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