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第356話

「雪ちゃんの過去を一番汚いものだと思っているのも、自由を許さないのも、不幸になるって信じてるのも、雪ちゃん自身。そんな自分が愛されるなんて、あり得ないと思ってる。だからね、もしも周が真剣に告白したって、雪ちゃんはそれを子供故の勘違いだとか、狭い世界しか知らないから錯覚しているんだとか思って、受け取らないし、当然応えもしないよ。それで済めばいいけど、最悪は周にそんな勘違いをさせてしまったのは自分が罪深くて醜い人間だからだ、なーんて思いつめるだけ。後退することはあっても、前進なんてしないよ」  汚い男娼だと罵った末子に何も言い返さなかったのが良い例だ。結局あの後、雪也は末子との取引を停止して関りを断ったようだが、それも周に危害を加えられそうだったから反撃しただけであって、あのまま雪也だけが打ち付けられていたなら、彼は何も言い返さず、反撃もせず、ただ静かにその理不尽な怒りを受け止め続けただろう。誰よりも雪也が、それも致し方ないほど罪深いのだと思っているのだから。

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