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第366話
静かに、しかし殺しきることのできなかった足音がパタパタと動き回る中、優は行き交う人々を上手く避けながら奥の部屋へと向かった。しっかりと閉められた襖の前には側仕えたちが控えており、重々しい空気を纏っている。そんな中、膝をついて小さく襖を開いた優は、それに気づき振り返った弥生に視線を向け、小さく頷いた。立ち上がり襖から三歩離れれば、静かに襖が開いて弥生が出てくる。その疲れ切った表情にほんの僅か眉を顰めるが、ここは人目が多い。弥生と共に無言でその場を離れ、弥生に与えられている部屋へと向かった。
「わざわざ来るなど、何があった?」
よほどの緊急事態かと視線を鋭くさせる弥生に、優は彼の手を引いて座らせるとポンポン、と優しく撫でた。
「用事はあるんだけど、少し落ち着いたら? ずっと上様についていて、弥生も疲れているだろう? 医師も近臣も傍についてるんだから、弥生も休憩しないと倒れてしまう。今は、少し休んだとしてもそれを避けるべきだろう?」
ずっと続く緊迫状態の中、弥生も自分の限界を感じていたのだろう。頭痛を和らげようと眉間を揉みながら、無言で頷く。そんな弥生を少しの間見守り、彼が小さく息をついた時、優は襟の合わせに忍ばせていた紙片を弥生に渡した。
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