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第383話

 ジワジワと周りを囲まれ、いつの間にか身動きが取れなくなってきて、雪也は小さくため息をつく。薬草を摘む今この瞬間だけが、息をつける時間だった。  感情が揺れ動き眠れぬ日々が続いているが、薬を飲むこともできない。夜に冷水を浴びることも不可能になった今、雪也の身体は様々な意味でボロボロであったが、倒れるわけにもいかなかった。 〝可哀想だから、申し訳ないからと本来受け取るはずの金を受け取らんのは善意のように見えるが、最後に待つのはそなたと、そなたが養っている者だけが破滅する未来だ〟  以前、兵衛の父親に告げられた言葉を思い出す。雪也が望んだ客ではなく、雪也が進んで薬を渡したわけではないが、現状はまさにこの言葉の通りだ。次々に運ばれる怪我人と、その親族、そして同じ志を持つ仲間を救ってほしいと願う浩二郎によって、本来庵に住まっている、雪也が守り慈しみたいと願った周や由弦が肩身の狭い、居心地の悪い思いをするなんて。

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