「ちょッ、雪也!?　どうし――」 「雪也ッ!?」 　勢いよく中から出てきた周が顔を真っ青にしながら駆け寄ってくる。これほどまわりがうるさいというのに、雪也の瞼は閉じられていて、起きる様子もない。ほんの少し触れただけでも雪也の身体はすごく熱くて、やはり体調が悪かったんじゃないかと周は唇を噛む。 「雪也、雪也」 　雪也のまわりを男達が囲んでいるのが気に食わない。良い人だとはわかっているが、女将が雪也を背負っていると思うとイライラしてしまう。早く、早く取り戻さなければと焦って雪也の身体に手を回そうとした周に、女将は苦笑した。 「まだあんたじゃ、いくら雪ちゃんが軽いといっても無理だよ。寝床まで私が運んでやるから、布団、敷いてくれるかい？」 　早く寝かしてやらないと、と笑う女将に「俺がやってくる！」と由弦が駆けだす。ついて来ようとした男達を追い払い、女将と雪也だけを庵の中に入れて周はしっかりと扉を閉めた。