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第468話

 例え周が我儘ばかりであったとしても、聞き分けが悪くても、失敗ばかりで何の役にも立たなかったとしても、それでも決して突き放したりなどしない。だって、周と一緒にいる時に、彼の存在価値を測ったりなど。 「そんなことッ」 「しない。そう、そんなことで切り捨てたりはしないだろう。雪也、そういうことだ」  人は無意識のうちに最も恐れることを想像し、何度もそれを脳内で繰り返してしまう。だが、今回はただの想像だ。本当に起こることは無い。それをそろそろ雪也も信じて良い頃だろう。 「何も心配する必要はなかっただろう? 恐れるものなど何もない。現に周たちは雪也から離れておらず、私もこうして、ここにいる」  確信をもって言われたそれに、少しの沈黙の後に雪也はコクリと頷いた。コクリ、コクリと、何度も確かめるように頷く雪也の肩は少し震えていて。しかし弥生はただ雪也の髪を撫でてその震えには気づかないフリをした。 「雪也、あれこれと気を回して疲れただろう。だが、周たちを守ってくれてありがとう」  二度と自分を犠牲にしてほしくはないから、そのやり方を褒めてはやれないけれど。それでも雪也がいなければもっと危険な事が起こっていたかもしれない。刀を持つ相手に、全員無傷で終わらせることができたのは、確かに雪也の気遣いゆえだった。

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