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第520話

「彼らには崇高な志があります。そしてそれは自己の利益のためではなく、国のためなのです。自らが富と権力を築くことに必死で、民から搾取することしか考えず、だというのに他国と戦う気概のない近臣たちと、どちらが国のためであるかなど明白ではありませんか。彼らに足りないのは力です。それだけです。ならば力ある者が貸してやれば良いだけのこと。衛府を相手に織戸築だけでは足りないかもしれません。ですが、この峰藤が味方になればこの国はうんと早く良い未来を掴むことができるのです」  それが民のためではありませんか。  瞳を輝かせる光明の脳裏では、きっと思い描く国が広がっていることだろう。かつてはもう少し穏やかな思考をしていたはずなのに、いつの間にこれほど盲目になってしまったのか。  ツキツキと痛む頭に小さくため息をついて、杜環は茶をひと口飲んだ。 「衛府の者がすべからく清廉潔白だなどとは私も言いはしないが、同時にあなたが取り込もうとしている彼らに足りないものが力だけだとも言えない」  遠回しに杜環が何を言ったのかがわかり、光明は不快そうに眉根をよせる。その、思い通りにいかない現実を突きつけられて不貞腐れる子供のような顔に、やはり光明は甘いのだと幾度も絶えず零れ落ちそうになるため息を努めて吞み込んだ。

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