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第552話
「じゃ、とりあえず野菜の土を落としてくるよ。そっから掃除だっけ? 大丈夫、任せて」
蒼がいつもやっている工程をなぞるように言えば、蒼はへにゃりと眉を下げた。
「ごめんね~」
本当はこんなに頼ってはいけないけれど、今は大丈夫だなんて嘘でも言えない。そんな蒼にヒラヒラと湊は手を振った。
「大丈夫。いつも野菜もらってるから、その分くらいは働かないとね!」
庵で湊が食べている食事も、野菜はほぼすべて蒼の店が用意したものだ。蒼や彼の父は食べる分には問題ないけど売り物にはならないものだから、と言っているが、それはそれ。食べているのなら働きで返すのが筋だ。
籠に積まれたままのジャガイモを持って、湊は店を出ると邪魔にならないように端へ避ける。いちおう蒼が店に出せる形のものと、そうでないものの選別はしたのだろうジャガイモたちを眺めて、置いたままにされていた低い椅子に腰かけるとタスキをかけて袖をまくった。
(今日も夕方には庵に行く予定だったけど、蒼は大丈夫かな……)
手伝いはするが、当然ながら帳簿を触ったことのない湊には、どんな間違いがあって、それを修正するのにどれだけの時間がかかるかを想像することもできない。それに、蒼の仕事は何も帳簿を整理することだけではないのだ。
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