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第679話 ※

「まぁいい。お前らの覚悟がどんなものであったとしても、もう関係ねぇだろ。ここに刀を持って立っている、それだけで充分だ。お前らが志とやらの為に戦うというなら、俺も俺の心の為に戦う。それが相容れることはなかった、それだけのことだからな」  腰を落とし、槍を構える紫呉に慌てて兵たちも刀を握りなおす。ジットリと嫌な汗が流れた。 「逃げるなら逃げても良いぜ。その後で弥生を追っかけて殺そうって魂胆なら、地の果てまで追いかけて俺がその命をもらうがな」  鋭い瞳でこちらを見る紫呉の姿に逃げれるものなら逃げたいと、どれほどの兵がそう思ったことだろう。だが、現実はそんな選択肢など与えてくれない。もしかすれば紫呉はその言葉の通りに逃がしてくれるかもしれない。弥生さえ狙わなければ追いかけてくることもないかもしれない。だが、織戸築は? 尊皇派の者達は? 松中は? 誰も、誰も彼らを許さないだろう。結局、逃げ道などどこにもないのだ。  ならば――ッ! 「まぁ、そうなるだろな」  ガチャッ、と刀を構える者達の揺らぎが消えるのを見て、紫呉は不敵に唇を歪める。風の流れが変わった瞬間に槍を振るった。

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