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第73話

(それにしても、やっぱ綺麗だな)  同じ家で暮らしているのだ。もはや見飽きるほどに雪也の顔は見ているが、それでも綺麗だと感嘆せざるを得ない美しさだと由弦は思う。かさつきなど無い白い肌に、長い睫毛。ほんの少し開いた唇は何もしていないはずなのに赤く瑞々しい。女にもキャーキャーと言われているが、何故か男に告白されることも多く、しかもその告白がふざけたものや遊びなどではなく本気であるのだ。そんな光景を大学に入って初めて目の当たりにした由弦は、しかしこれほどに雪也が美しいなら、そんなこともあるかと素直に納得した。 (それに雪也は、優しいし)  美しいだけで性格が悪かったなら、ここまで男女問わずモテモテになることは無かっただろう。例え顔で恋人が途切れなかったとしても、性格が悪ければ人はいつか嫌気がさして離れていく。だが雪也は鈍感でおっとりとしているけれど、とても優しいのだ。側にいて落ち着くことができる。まるでずっと家族であったかのような温もりや、その姿を見るだけで安心する何かを雪也は持っていた。

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