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十六日『駅弁記念日』

 各駅停車の電車に揺られてのんびりお出かけ。停車中の窓からじっとホームを見ていた晴日が、興奮気味に信周の膝をとんとんと叩いた。 「ノブくん。ねえ見て、駅弁屋さんだって」 「お、美味そ……六分停車か、間に合うな」  信周は晴日の方にぐっと体を乗り出して電光掲示板をチェックする。   「俺買ってくる。ハルは待ってて」    そう言うと、信周はさっと電車を飛び出した。駅弁を買って振り返えると、窓に張り付いて大きく手を振る晴日の笑顔が見える。    目的地の海まであと五駅。今年は海水浴三昧の夏になりそうだ。  

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