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十六日『月遅れ盆送り火』

 夜。晴日の布団の中からもごもごと話し声。帰省のときの寝落ち電話は二人のお約束だ。  実家で家族とゆっくり過ごして、墓参りにも行って、祖父母宅を訪れて。晴日のとりとめのない話を信周は「うんうん」と相槌を打ちながら聞いている。  やがて。  晴日の話し声がだんだん小さくなっていき、代わりに小さな寝息が聞こえ始める。晴日の寝顔を想像して信周は頬を緩ませた。 「おやすみ、ハル」  優しく呼びかけると、信周はそっと通話を切った。

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