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二十二日『カニカマの日』

「ハル、夕飯どうしようか?」 「うーん、そうだねぇ」    晴日が水槽を洗っていると、信周がやってきた。カニたちはシンクの中を自由に歩き回っている。 「なあ、ハル。こいつらって元々唐揚げ用だったよな?」 「うん、そうだけど……」  じっとカニを見つめる信周の表情が何だか怖くて、晴日は慌てた。 「ノブくん、何考えてんの? だめだよっ」 「え?」 「これ洗ったら、俺買い物行ってくる。ほら、えっと、カニカマ! カニカマいっぱい買ってくるからっ」    ――いや、そんなつもりはなかったんだけどな。  早口でまくし立てる晴日に、信周はふっと笑ってみせた。   「ハルが可愛がってるカニ、食べたりなんかしないよ。買い物、一緒に行こう?」    優しく諭すように言われて、晴日はまだこわばった顔でこくりと頷いた。

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