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★番★ 第67話 あっくんの言うことには

 僕がいつも通りに授業を終えると、スマホが鳴った。取り出してみると、あっくんが正門で待ってるとメッセージが来ていた。僕は生徒会だったけれど、朝のこともあって欠席すると悠太郎には言ってあった。  廊下をこちらに向かって歩いてくる悠太郎に僕は言った。 「ごめんね、悠太郎。イマイチ本調子じゃ無くて。今度今日の分も仕事するから。」  悠太郎は優しく微笑むと、僕の頭を撫でて言った。 「ああ、尊に聞いてるから、こっちのことは大丈夫だ。篤哉さん、迎えにきたのか?…早く行った方がいい。じゃあな、気をつけて。」  僕は尊と、悠太郎にバイバイすると、急いで正門へ向かった。時々、すれ違う同級生や下級生が挨拶してくれて、僕はにこやかに挨拶しながら小走りで急いだ。  正門で、こちらを笑顔で見つめるあっくんを見た瞬間、僕はドキドキといつもより心臓がうるさく騒いだ。僕は思わず胸に手を当てて、立ち止まるとあっくんが心配そうな顔をして駆け寄ってきた。 「理玖!どうした?」  僕は身体がドキドキと脈打っていた。なんか、これって…。駆け寄ってきたあっくんの良い匂いで僕は益々苦しいような、熱いような、吐き出す息も絶え絶えになってきた。  僕が思わず蹲ると、あっくんはスマホでどこかに連絡して、苦しんでいる僕をサッと抱き上げると急いで歩き出した。正門側に停めていた車に僕を慎重に乗せると、大きく深呼吸して胸から何か薬のようなものを出して噛み砕くと、しばらくハンドルにもたれかかっていた。1分か、2分、僕には随分長く感じられたけれど、あっくんは顔を上げると、どこかに向かって車を走らせた。  はぁはぁと息苦しく感じて朦朧としながら、僕はあっくんの横顔を見つめた。あっくんは少し赤らんだ顔で口元を引き締めながら、時々僕を心配そうに見つめた。僕は何だか色々怖くなって、あっくんに手を伸ばすと、あっくんは左手で僕の手を握ってくれた。  長いような、短いような息苦しい時間が過ぎて、僕はいつの間にかあっくんの部屋のベッドに横になっていた。僕は覗き込んでいたあっくんの顔を見上げながら尋ねた。 「あっくん、僕…。」  あっくんは僕の額にキスすると、髪を撫でながら言った。 「少し薬が効いたみたいだな。でも直ぐに効果が切れるって医者も言ってた。理玖はヒートが来たんだ。理玖、これから訳が分からなくなる前に確認したいんだけど、…理玖を噛んでもいいか?  本当はもっと後で番になろうと思ってたんだ。でも、他のαに理玖が噛まれるリスクを俺は取れないんだ。理玖は俺のものだ。俺を理玖だけのものにしてくれるか?」

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