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出会い

江東睦月(えとうむつき)さーん…診察室1番へお入りくださーい」 首にカラーを巻きΩなんだろうなと思われる若い膨満なボディの看護師がのほほんとした口調で呼び込みをした。 このおねーさん、Ωなのに就職できたんだ。すごい… 「江東さーん」 「あ、はい。ごめんなさいオレです」 その声に睦月は小さく手をあげ診察室へと入っていった。 「あの…お願いします」 コートを脱ぎ椅子に座ると、目の前の明らかにαって感じの賢そうなおじさん先生はろくにカルテに目も通さずオレをチラッと見ると 「今日はどうされました?」 症状を尋ねた。 (いや、問診票見ろよ)と心の内で文句を言いながらも睦月は仕方なく口を開いた 「その…」 「うん」 「Ωだと診断されてから一度も発情が来なくて…別にオレは来なくてもいいんだけど、親がうるさくて」 「なるほど…じゃあ採血をしてまずはホルモン値を調べてみましょう。何、発情が来ないΩなんているはずがないよ、安心しなさい」 医者は軽い口調で診察の終了を告げた。 あんまりだと思う… こっちは真剣なのに 「はぁ…」 ため息がでる。 帰り道をとぼとぼ歩いていると足元にコロコロとボールが転がってきて足に当たった。 驚いて振り返るとKC姿の冴えない疲れた表情の見るからにβな男性が頭を掻きながら小走りに近寄ってきて 「すみませんっ。小児科の子どもたちと遊んでいて」 ガチっとそいつと目が合うと何故だか寒気がする… 風邪でもひろった?こんな早くに?? 早くこんな病原菌の巣窟から退散しないと… そいつの胸には〝研修医 西園寺悠介(さいおんじゆうすけ)〝の名前。 研修医か…しかしβなのに大層な苗字だな てか…この寒いのに外遊び? 子どもたち…病気じゃねーの? 「大丈夫です。はいボール」 「ありがとうございます」 足元のボールを拾い手渡すと静電気が飛んだ 「痛っ」 「すみませんっ。静電気体質で…俺。あのお見舞いですか?」 「あ…いや」 「患者さん?それならお大事に。静電気とボール申し訳なかったです」 無理矢理に作ったのであろう笑顔に見送られオレは病院を後にした。

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