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前世の記憶 アスミ2
前世での俺の名前は五十嵐 明日望(いがらし あすみ)。二十歳までの記憶しかないが、その歳で死んだ記憶もない。だから本当に前世かどうかも分からない。
何がどうなってんの??
これって異世界転生ってヤツでいいの?!!
この世界で生きて来た記憶もあるから、転移ではないと思うんだけど・・・
で、更に思い出したんだが、この世界って、俺が書いていた小説の世界じゃねぇ??!
ちょっとその前世?の事も振り返ってみる。まず俺は、前世でもトワとは友だちだった。
トワの前世の名前は市姫 叶和(いちひめ とわ)。俺は市姫と呼んでいた。
同じ大学で学部も一緒、五十嵐と市姫で出席番号が続いていたので話かけてみると、お互いにラノベが好きで特にASURA先生推しという事で意気投合。話も合うんだが、何となく容姿も似ていて、二卵性双生児と言っても通じるくらい。俺たちは、お互いを面白がってよく連むようになったんだ。
そして市姫から、同じ大学だが学部の違う月影 瑠依(つきかげ るい)を紹介され、ルイとも友だちになった。
市姫は貴志 流星(きし りゅうせい)と、ルイは風間 翔弥(かざま しょうや)と、どちらも同い年の男と付き合っていたが、俺は同性愛に何の偏見もなかったので全く気にならなかった。むしろ堂々としていて好感が持てたな。しかも、ショウとルイは超絶美形、リュウセイは爽やかイケメン、市姫も似ているとはいえ俺より数倍美人だったから、眼福ですらあった。
で、ルイの恋人のショウは、なんとASURA先生とは親戚みたいな関係で、ルイとも親しいらしく、サイン会の時に紹介してもらえたんだ!
しかもその後の打ち上げにまで、ルイ、市姫とともに参加させてもらえる事になった。ASURA先生はすごく気さくないい方で、見た目もなぜか俺と市姫の実の兄か?ってくらいに似ているんだ。「アスミくんか~名前まで似てるし親近感がわくなぁ!」って喜んでくださって・・・なんていうか、俺もめちゃくちゃ嬉しかった。
そこでASURA先生が高校生時代に初めて書いた未発表小説の話を聞いたんだ。
受験勉強の息抜きとして書いた、身近な人がまるごと異世界にいたら・・・ってコンセプトの小説だったらしい。
実はASURA先生も、その当時から今も同じ男性と付き合っていて、お相手は超絶美形の完璧王子と呼ばれるような人なんだそうだ。けど、ASURA先生からしたら完璧魔王としか思えなかったらしく、その彼氏さんのキョウさんを魔王にした異世界小説を書いたんだって(キョウさんはショウの伯父さんとの事)。そしてその小説の中でのASURA先生は王妃様だ。
ちなみに契約精霊は最初から登場する。つまり、元を正せばASURA先生がミイの生みの親って事。
で、その小説の続きを書いたのがルイ。もちろん非公開を条件にASURA先生の許可を得て。
当時十五歳だったルイとショウの関係は拗れてしまっていたらしい。誰がどう見てもショウはルイの事が好きで両思いなのに、ルイを無視して避けている。幼い頃からルイが好きすぎてついつい意地悪をしていたショウ。流石に中学生になってからはそんな事はしなくなったものの、ルイに謝るきっかけがつかめず、話しかける事が出来ずにいたようなんだ。
「いや~じれったかったね。俺とカグラでやきもきしまくったよ」
当時を知る市姫はそう言った。カグラとはショウの双子の妹で、なんというか破天荒な女王様タイプの女の子。けどルイの事は本当の弟のように思っていて、昔からショウの意地悪やら、他の子のやっかみからも守っていたらしい。
そんな状況が辛くて、十五歳のルイは、異世界で五歳のショウとルイがカグラとともに次代の魔王候補として、仲良く勉強したり遊んだりしている小説を書いて現実逃避をしていたようだ。
更に、その設定のまま数年経った異世界を舞台にした小説を市姫も書いていた。もちろんこちらも非公開を条件にASURA先生の了承済み。
そこでのトワはオオヤマネコの契約精霊を持つ人族で、リュウセイはドラゴン族で・・・・・・って、だいたい分かってくれたかと思うが、つまり、この世界と同じなんだよっ!
この世界の魔王はキョウ様で、王妃はアスラ様。そして次代の魔王候補はショウ様とルイ様。カグラ様は辞退されている。そして、魔族、人族、ドラゴン族での国交が始まり、人族のトワとドラゴン族のリュウセイが恋に落ちる・・・うん、ASURA先生、ルイ、市姫が書いて来た小説のまんまなんだよね。
この世界では身分が違いすぎて、俺はトワとリュウセイ以外の方々とは面識はないけれど。
そして、俺もまた、サイン会でその話を聞き、ASURA先生に非公開を条件に小説の続きを書く許可をいただいた。
その後、市姫とルイが書いた小説も読ませてもらった俺は、意気揚々と俺バージョンの異世界小説を書き始めたんだ。
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