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【社会人編】1
【あの日の〝恋〟の、続きをしよう。】
『杠葉!』
ーー今でも、時々夢を見る。
まだ名字が〝杠葉〟だった頃のこと。
嘘つきで、我が儘で、世間知らずで、いいとこなんかひとつも無くて。
けど、純粋にあいつだけを想い続けた大切な日々。
転校前に持ちかけられたゲームは、皮肉にも離婚直前で家庭が荒れ状態だった自分を救ってくれて。
そのまま、いい思い出となって終わった。
今でもそれは、自分の胸の1番大切なところに保管されている。
(まぁ、全部〝嘘〟だったんだけど)
ゲームを仕掛けてきたあいつは優しい奴だったし、こんな嫌な記憶とっとと忘れてしまいたかったはず。
だから、きっともう覚えてもいないだろう。
所詮は自分の独り善がりのなんてことない記憶ってことだ。
でも、別にいい。
こっちが勝手に覚えてるだけだし、覚えていて欲しいとか女々しくもないし。
可哀想なくらい純粋で、世間知らずだったあの頃の自分。
(今の自分を見たら、どう思うだろうか)
驚く? 悲しむ? 失望する? 受け入れる?
……まぁ、嫌でもこうなるから今のうちに心構えしとくといいよ。
この世界の〝普通〟は、自分のそれとは全く違っていて。
あの頃は性格をひん曲げて自分を守ろうとしてたけど、そんなの社会では通用するはずが無くて。
どうにかこうにかこの世界で生きるため、偽りの自分を作って心にも無いことを言って。
そうやって人形の様に生活する〝俺〟を、
あの頃の〝僕〟は 何て言うんだろうか。
(……なぁんて、もうどうでもいいか)
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